太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

スズキさんから借りてた森見登美彦、ようやく読めり。
京都の、それも本気で自分が今住んでいる近所を舞台に繰り広げられるファンタジック森見ワールド、森見登美彦を読むのはこれで3冊目ですが、ようやく慣れてきてますます引き込まれていく感じですね。
始まりは何となくストーカーの独白のような雰囲気で始まる本書。
主人公は結局名も語られなかった一人の、やや自分に自信を持ちすぎている森見ワールドに大抵一人はいる気高き漢。
その彼=私が以前交際していて袖にされた水尾さんを「素朴な学問的好奇心から」研究しているうちに何となく巻き起こる色々な出来事。
飾磨が起こした「砂漠の俺事件」は笑った。特にネーミングセンスとか。
ラストの「四条河原町ええじゃないか騒動」も笑いましたね。こういった発想は一体どこから来るのか、読みながら物語の世界に没頭しつつ、そんな自分を一歩外から見てうちひしがれている自分の存在を時たま感じます。
夜は短し歩けよ乙女、新釈走れメロス太陽の塔と読んできた私にはどうにも彼のこのデビュー作の文章が未だ洗練されていない、若干くどすぎるようなものに感じられる事もあったのですが、いやしかし、やはりそこは森見節、そこを覗かせない溢れんばかりのボキャブラリーで次々と語られる中二病的苦悩。こういう文章を読むと、酷く自分の小ささを感じますね。これを書いた当時氏が京大の院生だったと言うことを知ればなおさら。
というかこの間、森見氏が自分と10歳離れていない1979年生まれだと言うことを知って少なからぬショックを受けた次第であります。