紅牙のルビーウルフ

紅牙のルビーウルフ (富士見ファンタジア文庫)
第17回ファンタジア長編小説大賞準入選作品です。
読後感は爽快、まず「面白い」の一言が口をついて出る作品でした。
王家の血筋でなければ扱えない神具に、悪の宰相(しかも親子)、頼りになるんだけどどこか頼りない魔導騎士に、出鱈目に強い魔法の師匠、と王道中の王道キャラが大行進です。
物語も一息を着く間など基本的になく、はじめの七割程はほぼ一日刻みで物語が展開されていき、よどむことなく流れていくストーリーが非常に魅力的です。
主人公のルビーウルフは狼に育てられ、狼と話も出来るコトも出来る少女です。
盗賊に育てられて、強い精神を培った(?)彼女は、しかし実は王国の失われた王女だったとか。
と言うことで物語が序盤から急展開、そもそも家族の大半を殺されるという過酷な状況が物語の始点に持ってこられます。
でもここから先が強い。
脱走は当然のこととして、周りに対しても利用できるモノは利用する、と言う合理的な立ち居振る舞いをし、結局のところ多くの仲間を得て、悪の大臣をぶちのめす、と言う非常にストレートで横道なストーリーの仕上がりです。
相手の土俵に上がって勝負を仕掛ける(相手が主導権を握っている城の中で駆け引きを行う)スリル満点の仕立てには、緊張感からついついページをめくる手も早くなってしまいました。
あとがきが、さらにまた笑えるんです……(堪え笑)。
彼女たちはそう言うふうに生まれたのかぁ、と。
ともあれ、今年のアタリ本!と自信を持って言える一冊です。