GO-ONE

GO-ONE (集英社文庫)

GO-ONE (集英社文庫)

道中に読んでました。最近週一くらいのペースでしか本を読めていない様な気が……。なんの所為だろう。リトバスか?
さて、松樹剛史さんの小説、GO-ONEです。知っている人は知っているんでしょうけれど、あのジョッキーの著者です。高校三年生、受験勉強に閉塞していた記憶は微塵もないのですが、ふらっと寄った丸善で見かけたスポーツドクターの方で知り、その後ジョッキーも誘われるままに読んだ高三の秋。良い思い出です。
ジョッキーとスポーツドクターの二作以降新刊の声も聞かないので、そのまま何処へともなくフェードアウトしてしまったのかと思っていたのですが……、先日ルネの文庫平積みコーナーでこの本と出会いました。去年出ていた本らしいんですけれどね、知りませんでした。
松樹さんの小説は、ものすごく青春小説なんですよね。
それも、十代の青臭い青春ではないんです。
二十代、大人になって、それでもオトナの社会に頭を下げないような、そう言う人たちの青春を爽やかに描き出している、それが松樹さんの青春小説なんですよね。
そして、そう言う爽やかさにひどく惹かれてしまう。
高校生の時分にはただ面白い小説、と見ていたものが、恐らく今ジョッキーを読むと等身大で感じられる。
ということで、近日中にジョッキーを本箱の奥から引っ張り出してこようかと思っています。

本書は、春名競馬場という片田舎の競馬場と、そこにある日下部厩舎を取り巻く人々の描く、一辺の物語群である。
主人公の名は日下部一輝。競走馬の限界を超えて力を引き出す豪腕という馬追の技術に優れた、異色の騎手である。物語は彼を取り巻く者たちの視点、そして最後には彼自身の視点で描き出される。
……というのは少々違うか。
主人公は一人ではなく四人いる、と言ってもまんざら間違いではないような気がする。一輝の妹の一那、中央競馬で活躍する若手女性騎手の早輝、それからその早輝の友人である康友。
彼らが一皮むける物語、とでも言えば良いんでしょうかね。
競走馬を駆るという、その短い時間の為。そして短い時間の最後に誰よりも早くゴールの前を駆け抜けるという、その一瞬の為だけに色々な人が苦労して、苦心して、夢破れ或いは栄光を掴んでいる。
色々な角度から競馬というもの描き、そして色々な「在り方」に落ち着いていく様を生き生きと魅せてくれています。
やっぱり、松樹さんの小説は良い。本当に、良い。