ミキシング・ノート&ブルー・マズルカ

帰省中の読み物という感じで鞄に突っ込んでおいたのですが、レギオスシリーズは世界観から物語の流れから色々と好きなので、今回もさらさらっと読んでしまいましたね。
前巻ではラストでとうとうリーリンがツェルニにやってきたところでのキリだったのですが、ミキシング・ノートではレイフォンとリーリンの会話が大きな物語の軸、その間にレイフォンを取り巻く三人のツェルニの女性についての短編が披露される、と言うものでしたが、どれもなかなかの「レギオス」でしたねぇ。
一番面白かったのはフェリのSS「クール・イン・ザ・カッフェ」でしたかねえ。なんというか、フェリの不器用なところを詳らかに描き出しちゃってますから、読んでいる側としてはニヤニヤせざるを得ない。
本編の大きな話とは別に、こういう短編で学園都市ツェルニという閉じた世界を生き生きと描き出しているのが良いですよね。フェリSSでは商業&服飾デザイン関係の仕事に従事している学生たち、ニーナSSではそれまであまり描かれていなかった「寮生活」的なところ、メイシェンSSでは雑誌の取材。こういう周辺要素を充実させられるファンタジーっていいですよね。好きです。
それにしても、改めてみてみればレギオスも大概魅力的な女性が多い……というかレイフォンが色んな女性に好かれているお話ですね。カバー折り込みの紹介文で「本妻」と言われているグレンダンの幼なじみリーリン、それからか弱いクラスメイトのメイシェン、武芸者が不本意であるという同じ境遇を共有していたフェリに、頼れる先輩兼隊長のニーナですからね。しかもニーナは今ひとつ自覚していないというのもまた面白い。
リーリンもツェルニでレイフォン争奪戦に加わっちゃったわけですし……、この恋模様がここからどう発展していくのかは個人的にとっても楽しみだったりします。
そして、時系列的には次になるブルー・マズルカ。ただし3ヶ月ほど時間が跳んで、どうにも知らない出来事がぽつぽつ回想されていることからドラマガあたりで短編があったのかな? ドラマガは読んでいないのでその辺りは一瞬首を傾げる事も……。
まあそれはともかく、平和な日常と訪れる新たな驚異のお話。……とりあえず、レイフォンが水着の女の子に囲まれてのぼせちゃうって言うのはどうなんだ? うーん、この超鈍感男め。うい奴。なんというか、イベントとして一回やってみたいというのは分かるんですが、あーもう、ニヤニヤ。
そんな平穏と紙一重のところでは、とうとうリーリンがツェルニにやってきた目的、レイフォンに刀を渡すということをします。というか三ヶ月も足踏みしていたのか、と思ってしまうのですが、とにかく色々と足を踏み出せないことがあっても、ようやくリーリンが刀を渡して、一悶着起こしつつもレイフォンがそれを受け入れる。
それが、ここからの鍵ですよねー。
刀という本来の得物を使うようになって、これからレイフォンにはますます過酷な戦いを強いられる事になるようですし、それになんだかグレンダンとツェルニが近づいていってしまうっぽいですし、全てはアルシェイラの掌の上という感じはしないでもないんですが、閉鎖都市という閉じられた空間で動いていたドラマが大きく転換点を迎えそうですね。
とはいいつつも、次巻はドラマガの短編で違う話らしい……。残念、とは思う一方で、それがないと恐らくディックの話とか分からないんでしょうねー……。楽しみです。

ミキシング・ノートの最後についていた短編。レイフォンが天剣授受者になった直後の話で、やたら庶民臭いリンテンスさんが出てきたりレイフォンの対汚染獣老生体単身初出動だったり、或いは弱冠十歳で天剣を射止めたレイフォンに対する周りの話だったり。
こういう短編を巧く使って物語の根底に流れている人物関係や事実関係を仄めかしているのが、凄いなぁと思うわけですよ。8巻の短編があるから9巻で明かされつつあるリーリンの出自というものが重みを増してくるんですよね。それからグレンダンであった色々な出来事の必然性も。
当初はグレンダンなんて斬り捨てた過去、みたいな感じに思っていたのですが、どうやらそうはならず全ての役者がツェルニに集まってくるここからの物語、目が離せませぬ。