“文学少女”と神に臨む作家(ロマンシェ) 上

ここ一年くらいのお気に入りシリーズトップ3に入るであろう作品、野村美月さんの“文学少女”シリーズの最新刊……、とは言っても刊行されたのは3月末で、下宿の近隣の本屋さんでこの前の巻をニアミスして買いそこねた事があって焦った思い出もあり、何故か確実に置いている公算のあった地元の本屋で買った記憶があります。
それからずっと積んでたんですが。
おやつはいくつか読みそびれているウチにページ削除されちゃったみたいですね……残念。
さて、本編としてはこれが最終章と言う事らしいですが下巻は8月末発売らしいですね。これくらいのタイミングで読むのが丁度良かったような気が、しないでもありません。そういうことにしといて……。
“文学少女”シリーズは主人公の遠子と心葉が第三者よりは近いけれども当事者でもない第2.5者くらいの立場で物語に関わっていき、ある種病的とも言える複雑な人間関係と特定の文学作品の間に見られるいくつかの符合を鍵に目の前の事柄を読み解いていくというお話ですが……、どうにも流石に最終章ともなれば様相が変わってきますね。
発行順だと間にウンディーネの番外編が入るから混乱しますけれど、これって時系列としてはパルミエーレの次の話なんですよね。琴吹ななせと心葉がつきあい始めて暫くした頃、ってところですか。それでもって、受験も近づいてるという、新しい年の始まりが近づいてきて人間関係が組み変わる直前の時期。
今回の胆は、やっぱり遠子先輩の家族関係の事情が明らかにされた事でしょうね。
今まで文学少女という名の妖怪で、なんかよく分からないけれども櫻井流人の家に居候している、というなかなかなぞめいたプロフィールしか明らかにされていなかった天野遠子という存在。そのルーツに関わる物語が、この神に臨む作家という物語なのでしょうね。
読んでみてまず思ってしまった事。
……えっと、ヤンデレ
上巻での印象がそのまま持ち越されて結論にたどり着けてしまうようなら、それは物語の構成として面白味に欠ける。大体今までの“文学少女”シリーズも大体「伏線は騙す為にある」っていう思想が見え隠れしていたから鵜呑みにしちゃうとケガしそうですが*1。ともあれ、上巻だけ読んでしまうと遠子母がヤンデレに思えて仕方ない。しかもアレですよね、ヤンデレって一側面だけ見たら甘〜い態度とこの上ない可愛さがあるんですよね? え? 違う? いや、ヤンデレに造詣は深くないのでよく分からないんですが……。
ともあれ、今までも暗躍っぷりが恐ろしかった流人君がとっても恐い感じに暗躍していて……、なんて言うか敵に回しちゃ行けない人間を敵に回しちゃった感がたっぷりしていますよね。
ラストでななせと心葉がまた良い感じになっていたのが、どうにも後の展開を考えると心配で仕方ないんですよ。この物語、どこに落ち着くのが「正解」なのかはよく分かりませんが、僕は少なくともななせを応援したいという気持ちがあるんですよね。心葉はやっぱり遠子先輩のことを無視できない、それはきっと間違いなくて、一番落ち着ける場所は遠子先輩の元だったんでしょうけれども……、ここ最近のななせと心葉の関係もなかなかどうして、うわべだけともとても思えないのも事実ですからねぇ。
さあて、最終巻がとても気になる上巻でしたが……、夏休みが過ぎ去るのは早そうだ。

*1:余談だけれど、伏線は後から物事を綺麗に符合させる伏線と、ミスリーディングのための伏線、と大きく二種類あるように思える