「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」を出しました

ここ最近ずっと気になっていたんですが、思い切って朝一かひと頑張りして自分の意見をまとめてみました。とは言っても、これだけの意見をちょっとやそっとやる気を出したいち素人がまとめるのは無理ですから、MIAUのひな形は活用させていただきましたが。
MIAUにあるパブリックコメントジェネレーター(http://dev2007.miau.jp/public-comment-generator.html)というもので出てきたひな形を踏まえながら、自分の意見を盛り込んで直したものを使いました。パブリックコメントジェネレーターには、「結局MIAUの意見を色々な人の手から出させるだけ」であり、「パブコメは数が問題になる性質の意見募集ではない」ため、あまり意味がないという意見もあるようですが、このままじゃいけない気がする素人が何らかの意見を表明する為にはある程度の指針を与えてくれるものが必要なのも事実です。みんながみんなジェネレーターの意見をほぼそのまま提出するのでは確かに意味がないのですが、(自分がそうと言える自信はないですが)ジェネレーターを参考にして自分の意見をきちっと練り上げて提出する人だっているわけですから、MIAUのやっていることは意味のあることだと思います。
私のコメントの基本的なスタンスは、私的録音録画の規制をこの案で強めたら日本の文化発展に打撃を与える、というものです。私個人でやってる創作活動は今のところネット上で何かをやってると言うことはないんですけど、ウェブコミックとかのサイト巡りとかはある程度やってますので、引っかかる点は多いですね。著作権に関する問題は現状でも黒や灰色の点は大量にあって、大量にありすぎるが為にあんまり酷いの以外は放っておかれてるという状況があると思います。改正案が通ったところで同じようにグレーのまま放置される、と言う可能性は高いとは言え、逆に改正案が通ったがために一気に規制が強まって何でもかんでもクロとなり、Webの楽しみ方ががらっと変わらざるをえなくなる可能性だってあるんですよね。
それはやっぱり恐いじゃないですか。多分、今をときめく漫画家だって最初は好きな漫画の模写から入った人は少なくない。アマチュアクリエイターとしての活動を支えるものの一つで、今決して無視できないまでに成長したものとして個人のウェブサイトが挙げられるでしょう。そう言ったところで行う二次創作が片端からクロになりかねないわけですよ(今はまだ動画・音楽に限られてますが、いずれ書籍関連に波及することは指摘されています)。音楽だって初音ミクブームで今非常に盛り上がっている分野なのに、この改正案はそれに水を差しかねない。
要するに、既得権者が中心となって考えている法案だからアマチュアクリエイターのウェブ活動に対して全然優しくないんですよね。それは宜しくないだろうと。
思うところある人は、今からでもまだ遅くない。是非パブリックコメントを送るべきです。とりあえず、問題点の概要インタビューを読んで、パブリックコメントジェネレーターの質問に答えてみたら、結構問題が多いと言うことに気付くと思います。そこから、ジェネレータの結果を参考にしつつ自分の意見を更に練り込んでみれば、決して恥じることのない意見書になるはずです(少なくとも私はそう信じて作り、送りました)。
てなわけで、以下参考リンク。

でもって、以下、不肖よしけむの提出したパブリックコメント

個人/団体の別:個人
氏名:よしけむ*1
住所:京都府京都市左京区***
電話連絡先:***
メール連絡先:***
該当ページおよび項目名:以下小見出しに記載
意見:以下、該当ページおよび項目ごとに記載




I.104ページの「i 第30条の適用範囲からの除外」の項目について
反対します。理由は以下の4点です。


1.ダウンロードが違法化されたら、動画・音楽投稿Webサイトはユーザーが違法ダウンロードしないよう、アップロードに気を遣わされるようになり、その結果、著作権者が自らアップロードしている場合のような、間違ったクレームにも対応してしまって削除される事故が、頻発するようになります。実際に現在、ニコニコ動画などの投稿型Webサイトで自主制作の音楽コンテンツをアップロードしていたユーザーが第三者から著作権侵害のクレームを受け、著作権者がアップロードしている著作物が著作権者からの申告により削除される、という奇妙な現象が起きています*2。この法改正案はこのように弱小の著作権者に不当なリスクを負わせる事態をより一層後押しすることになり、今後の文化発展の下地を大きく損なう危険があります。


2.この違法化案が通ったら、書籍業界でもダウンロード違法化の対象とするよう求めていくと言われていますし、そうなると現在の日本文化の中で小さからぬ地位を占めるパロディ文化が殺されることになるでしょう。パロディ文化が原作品の利益を損なっていることは少ないだろう上、それらのパロディが原作品の知名度を上げて新規ユーザーの開拓をしていることも多いにもかかわらず、それが利益の侵害として違法化されるというのはおかしいと考えられます。また、パロディによる面白みを生かした創作に関して、その自由な制作を圧迫することにもつながり、結果として日本の文化発展を阻害することになると考えられます。


3.ストリーミングとダウンロードは技術上大差がない*3のに、法律的に違うものとして扱ってしまうと、技術的な選択の幅を狭めてしまいます。それは、今後Youtubeニコニコ動画など、現在キャッシュによる疑似ストリーミングで配信を行っているサイト*4が、よりユーザーの利便性を考えてダウンロードに近い形のサービスを展開する可能性がありますが、そのような革新を行う大きな足かせとなってしまいます。そうなると、Webサービスの可能性が意味もなく狭くなってしまい、これからのIT文化の発展を阻害することになってしまうと考えられます。


4.インターネットというものはそもそもグローバルなものであり、日本の法律で違法なことが海外で違法とは限らないし、その逆もありえます。海外サイトが正しく日本の著作権法に基づいて適法マークを付ける期待は薄く、またそもそも海外サイトを「適法市場」から不当に締め出す事にもつながります。海外のコンテンツを楽しんでいるユーザーが不当な不利益を被ることになる上、コンテンツ産業鎖国が起きて諸外国のコンテンツ産業から後れを取ることにもなりえます。




II.105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
「適法サイトに関する情報提供方法」の観点から反対します。理由は以下の2点です。


1.情報提供方法として「合法マーク」という意見が唱えられていますが*5、「合法マーク」は、個人クリエイターなどのサイトを、「適法市場」から排除することになると考えられます。大手の商業団体に関しては確かに「合法マーク」を浸透させて彼らの管理下にあるサイトの合法性を確立することは可能でしょう。しかし、そうなると個人で著作権に抵触しないオリジナルの音楽や動画を配信しているクリエイターのサイトが違法となってしまう可能性が高くなります。趣味で作曲し、それを公開しているクリエイターは数多くいるため、、それら全てに対して何らかの審査によって完全に独創的であると言うことを認め「合法マーク」を発行することは現実的には不可能です。そうなると多くの個人(アマチュア)クリエイターは「適法市場」から排除されることになりますが、これは大手の商業団体など既得権者の既得権益の保護に偏りすぎたもので、公正な競争に反するものと考えられます。


2.そもそも、「合法マーク」の発行などに関する仕組みについて詳しく知っていなければ、自らが著作権を持つ著作物を自由に発表しユーザーにダウンロードして楽しんで貰うことさえ出来ないというのは、クリエイターの創作意欲および発表意欲に対して大きな枷をはめることになりかねません。個人クリエイターの意欲減衰が最終的にコンテンツ産業の不活性化に繋がることは、コンテンツ産業の担い手が結局は個人クリエイターの集合であるということからも明白です。長い目で見れば既得権者である大手の商業団体を含む全ての著作権者にとって有害でしかないと考えられるので、この件に関しては反対です。




III.105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
「違法サイト」という観点から反対します。理由は以下の1点です。


1.違法ダウンロードサイトという考え方は不明確であるだけでなく、われわれ国民の良識にそぐわない違法判断や文化庁が提示している考え方にそぐわない違法判断を裁判所が下す場合もあります。例としてMYUTA事件判決*6には多くの批判が巻き起こりましたが、MYUTAのようなサイトを使用したユーザーも、ダウンロード違法化が成立したら違法だということになってしまいます。国民の認識と裁判所の認識が異なってしまう可能性のある条件が法的な適法性のラインを定めることになると、クリエイターもユーザーも自由かつ適法な活動を行う際に少なからず躊躇したりや内心的制限を自らに加えたりすることが考えられます。自由な活動が制限されることはこれからのWebサービス開発を不当に萎縮させることにも繋がりますし、インターネット上で展開される様々な創作活動を圧迫することにも繋がります。




以上の意見を提出します。

*1:勿論本名で出しました

*2:あまりにもマジです。現在ニコ動は違法性指摘に関しては誰でもが行えるようになっている為、そう言う謎の事態が発生しています。参考URL(実際にそんな被害に遭った人のブログエントリ):http://d.hatena.ne.jp/wang-zhi/20071020/1192865828

*3:改正案ではストリーミング配信はダウンロードではないと言う見方。

*4:現在の見解ではキャッシュはダウンロードではないとする解釈が強いが、専門家の間でもキャッシュファイルをダウンロードファイルと見なすかどうかは議論対象になっている。

*5:日本レコード協会とかを中心に提唱されてます。合法サイトには合法マークを表示させるようにすると言う案。マークがないサイトからダウンロードした場合「情を知って違法DLをした」と見なされる案。

*6:「Web上にmp3ファイルをアップロードしたら携帯用の音楽ファイルに変換されて保存され、かつそれは本人にしかダウンロードできないというストレージサービス(Web上の倉庫みたいなもん)」をやっていたMYUTAJASRACに訴えられて著作権的にクロになった判決。それじゃあYahoo!ブリーフケースも(自分の著作物でない限り)著作権に引っかかるのかとか、色々議論を呼ぶ判決ではあった。MYUTAのサービスが特殊でMYUTA無しでは素人は同様のことを出来ないというのが割とポイントだったらしいけれど、とは言えパッと見は私的利用の範囲を出るようには見えない一件である。