リリカルマジカルミュージック

時間が出来たので久しぶりに思うことをつらつらと書き連ねたいと思います。
テーマは魔法少女リリカルなのはの音楽。

さて、魔法少女リリカルなのはといえば、主演田村ゆかり水樹奈々で、3期4クールを熱血爆走したアニメですが、個人的には最高傑作は二期のA'sであり、それは勿論一期の素晴らしさがあった上に成り立つものであるが、三期StrikerSはそれまでの良さを生かし切る作品とはならずに、どうにも一期+A'sを前にしては霞む、蛇足のような三期になってしまったような気がします。勿論三期だって好きですよ。けれど、話をコンパクトにまとめて登場人物に感情移入を呼び、強烈なクライマックスを迎えた上で一話を丸まるエピローグに当てた一期+A'sに比べると、StrikerSはやはり登場人物が多すぎの上にそれらの話を一点に上手く収束させることが出来なかった為、感動も散発的で今ひとつという印象が強く残ります。まあ、StrikerSたたきが目的ではないし、先述の通りStrikerSだって好きなのでこれはこのあたりで。
さて、それでテーマはなのはの音楽なのですが、魔法少女リリカルなのはは一応多分主演田村ゆかりになると思うんですね。とりあえず一気に目を向けると水樹奈々演じるフェイト・テスタロッサは第4話まで出てこないわけですから。それでいて、OP主題歌は水樹奈々歌う「innocent starter」。ちょっと「あれ?」と思うわけですよね。でも実際水樹奈々は歌が上手いし、田村ゆかりだってED主題歌を歌っているのでよし。この体勢は二期、三期も引き継がれ、OPを水樹奈々、EDを田村ゆかりが歌うといういわばリリカル方程式がここに成立しているわけですよ。今回はこのOP主題歌と、あと水樹奈々による挿入歌に焦点を当てて語ろうと思っています。
最初に要約しておくと……、よしけむは水樹奈々が好きだってことです。

魔法少女リリカルなのは。A's以降と区別する為に無印とか一期と呼ばれることもありますが、このOPは「innocent starter」です。OP映像も良い味を出していて、今でも非常に好きな一曲。これはまさに「魔法少女リリカルなのは」と言う物語を端的に4分41秒ほどに凝縮した物語なんですよね。
1番はフェイト・テスタロッサという少女のことを歌っていますよね。母親の命令に疑問を覚えながらも「本当を知ることが恐くて扉を閉じ」てジュエルシードを集める一人の少女。「寂しさ隠す一途な気持ち」がなのは(キミ)の「心を傷つけてゆく」ことを彼女が誰よりも知っている。友達になりたい、そう呼びかけてくるなのはは触れたらきっと温かい。そのことは分かっているけれど、「触れたら壊れそうなぬくもり」に手を伸ばす勇気が出ない。そんな少女の下に「やわらかな愛」を「届けに行く」というなのはの側からの歌。これがまず物語を動かしていく鍵なんです。1番はなのはがフェイトのことを歌う、呼びかけの歌。
2番は逆にフェイトからなのはへ向けられる歌。はじめ彼女はなのはのことを見くびっていた。背負うものもなく無邪気に、まさに子どものようで、「当たり前とか普通の」「幸せ」を享受している、自分とは違う境遇の幸せな女の子。むしろ嫌う節さえあったのかも知れない。けれども、やがて彼女の「迷うこと無い視線」とまっすぐぶつかり合い、その想いに心が動かされていく。それは「夜明けの赤い空に」描かれる「虹」のように、フェイトの心に掛かっていた「闇を包み込」んで、彼女の心を揺さぶっていく。プレシアから哀しい真実を突きつけられて未来を見失っても、なのはが教えてくれた心の強さが道を示してくれた。だから、その「ありのままの気持ちをきみ(なのは)の下へ伝えたい」と、そう言っている応答の歌。
フェイトの気持ちはそれだけじゃ抑えきれず、更に続く。フェイトの時間はまだ始まっても居ない。けれど、それをなのはのおかげで始めることが出来た。だから「始まりくれた君にそっと囁く」んです、「二人だけの約束」、友達になろうという、それはとても些細な約束でしかないのだけれども。その為にどうすればいい? そう訊ねたフェイトになのはは言った。名前を呼んでと。名前を呼ぶことで、君とかあなたとかじゃなく名前を呼ぶことで友達になれるからと。だからフェイトの気持ちは、なのはに「僕の名前を呼んで」と、友達と認めてという想い。
そう言う二人の少女の出会いと友情を描いた「魔法少女リリカルなのは」という物語を凝縮した歌。……名曲だ。やっぱり良い曲だよ、これ。
一期は挿入歌の「Take a shot」もこれまたフェイトの境遇をずばり歌った歌で、それが物語にばしっと絡められているからとても良い味を出してるんですよね。自分を取り戻す歌。全てはなのはのおかげ。ここに二人の固い友情が結ばれた……わけだけど、よく百合って言われてるんだよなぁ、これが。まあ、別に私はなの×フェイは嫌いではないので良いんですが(百合物好きというわけではない)。

A'sのOPは「ETARNAL BLAZE」
これは誰の曲か、結構考える余地があると思うんですよね。何となく、「迷い無く包み込むぬくもりに出会った」ではやてがアップになるからヴォルケンズの歌のようにも思えるんですけどね。んー、やっぱヴォルケンズとはやての歌なのかなぁ。フェイトを思わせるところも少なからずあるのだけど……。まあ、でもやはり基本はヴォルケンズかな。
「鉄の羽纏った僕」なんてのは、一期のフェイトを思わせる所でもありますが、はやてと出会う前のヴォルケンズもSS02なんかを聴くとまさにそんな感じでしたしね。そんな彼女たちも「どこまでも素直な言葉」によって動かされていき、生きる楽しみと護るべきものを感じるようになる。そして「君(=はやて)のその笑顔だけ守り抜きたい」というそのたった一つの願いが、闇の書蒐集という凶行に彼女らを走らせてしまうのですから。
2番でも「真実と向き合う」、つまり自分たちの存在がはやての足を悪くして命さえも奪おうとしている哀しい真実と向き合い、彼女が蒐集を望まないことは百も承知の上で、しかも蒐集が完了した後には何が起こるかも大方予想のついた上で、はやてに隠れてヴォルケンリッターの「誓い」を立てて凶行に走る。「ふれあう気持ち離れないように」、今のこの時が少しでも長く続けばいいと願って奔走する彼女たちの行く末は……、主であるはやてが優しく抱きしめてあげることで、お帰りの一言を掛けてあげることで「大切な今」が改めて始まるのだ。
やはり、これも曲の中身が物語にぴたりとはまっていて、素晴らしい組み合わせだと思うわけですよ。
挿入歌での「BRAVE PHOENIX」も、はやてとヴォルケンリッターが改めて目的を一つにして手と手を合わせる。そして闇の書の防衛プログラムと決着を付けるべく戦う、そこにもたらされる終わりはきっと新たなる始まり。解き放つ力が剣十字の形をして、胸に秘めた小さな勇気で奇跡を起こす。
このような名曲で彩られた魔法少女リリカルなのはA'sは間違いなく名作中の名作。

StrikerSがちょっと引っかかるんですよね〜。「SECRET AMBITION」で始まるわけですが、これが今ひとつ物語とリンクしていないような気がして仕方がない。いや、StrikerSにあまり感情移入できてないというのもあるのかも知れないんですけれど。
例えばサビの「僕は知りたいから決して止まらない」なんて言うのは……、どうなんでしょうかね。こういう意思を持っていた登場人物が居たでしょうか。ここで強いて焦点を当てるべき人間を上げるならスバルと言うことになりそうなものの、スバルはなのはに憧れてこの道を選んだのですから、特に知りたいことがあるとも思えない。他の人物にしたってそう。
2番になるとティアかな? と思う場面が幾つかあるのですが、それも陸士養成学校時代のティアでなかなか微妙ですよ。「その横顔に本当は心解きたい」とか、まあなのはが誇るツンデレキャラのティアである可能性は否定できないのですが。彼女は殆ど「なくすものはない」状態で頑張っていたわけですし、「今をかえたくて夢中で駆け抜けて」いるその途上でもスバルが隣にいてくれたし、「空に落ちた剣(=剣十字、ベルカ式魔法陣)の滴に見果てぬ思いを重ねて」いたこともあるでしょう。何せ自分は凡人でスバルはそうで無いという認識でしたし。まあ、だからティアという線も無くはない。
あとは3番、これはまあアリなんですよ。「護りたいと初めて感じた、明日へと続くこの場所」。まさに六課そのものですからね。
結果としてリンク度が一期+A'sに比べて遥かに落ちるかなーと。曲自体は好きなんですけどねぇ。
後期OPの「MASSIVE WONDERS」も似たような感じかなぁと。「言い訳で飾られた過去」って誰の、から始まるし、「夜の先に伝えたい」ことは相手も中身もよく分からない。これ実は結構ネガティブな歌詞なのですが、StrikerSの主人公達はみなさん前向きですからね、そぐわないんですよ。曲自体は申し分なく大好きなんですけれどね。めちゃめちゃ格好良いですから。
スカリエッティ戦での挿入歌「Pray」については微妙と言うことで。1番はわりかしフェイトです。「僕は今でも弱いままで」スカリエッティの言葉に惑わされ、エリオやキャロのことについて疑問を持ってしまった。そして「光の剣(=ダブルライオット)を抜けないで居た」。けれど「もう行こう」と思える。なぜなら「護るものがあるから」。家族というものを持ち、護るものを背負って戦うようになったフェイト・T・ハラオウン(但しまだ19歳)の色々な思いが歌われているとは言えるかと思うんですが、しかし2番で実は思いの相手が一人でしかないと言うことが判明、これはキャロとエリオの二人を相手に成立するフェイトの戦いとは違うのではないのかと思ってしまうわけです。というわけで、まあ微妙としか言いようがないかなと。

なのは一期+A'sは、本当に歌と物語のリンク、そしてそこに絡むOP映像の絶妙な見せ方が魅力でした。今でもOPを見るだけでテンション上がるし、下手すると涙腺緩みます(一期)。
公式宣伝文句が「熱血魔法バトルアクションアニメ」で、同人なんかを見てもハチャメチャに重点をおいたものが多いですが(なのはの大火力とかレイジングハートの薬物濫用とか)、魔法少女リリカルなのは一期+A'sは本当に熱く切ないドラマがぎゅ〜っと詰まった良いアニメだったと思います。
これを書いていたらまた見たくなってきた。どうしようか……。