狼と香辛料

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

良い獣が狼で、良い女が娘なわけか。これだけ漢字が似ているのだから、狼が娘になって現れても良いのかも知れない。そんなことを思わせてくれる小説でした。*1
ま、発行されたのはほぼ一年前一年以上前。色々あってずっと積ん読していた本を、気が向いたので読んでみました。
結論。めっちゃよかった。積ん読しておいて後悔すると言うことはしばしばあるのですが、今回の後悔はでかかった。
ていうかですね、もう端的に言って良いですか? ホロ萌え。よしけむは今にも「ホロは俺の嫁ー!」とでも言わんばかりの勢いでこの賢狼の娘に惚れてしまったのですよ。
十人が十人振り向く見目麗しき容貌で、幼いように見えてそれで居てどこか不思議な色香を漂わせている。「わっちの名前はホロ。ん、良い名前じゃろ」なんて一風変わった喋り方で、主人公ロレンスのことを子どものように手玉に取ることもあれば、「可愛いじゃろ」などと言ってどぎまぎさせたりもする。この春風のように気まぐれで夏の日差しのように眩しく秋の日差しのようにあたたかで優しい豊作の女神にベタボレとなってしまいました。しかし恐らくよしけむのような愚か者ではホロと話していたところで頭が回らずすぐに愛想を尽かされてしまうであろうことはもはや明確な事実。かくなる上は物語の中の彼女の魅力を余すところ無くしゃぶり尽くそうという所存である。
細かいことは、新しい本でもなければ恐らく色々な人が書いているのでしょう。なので多分私如きが書くことなどほとんどないわけですが。
風景の描写や心理の描写が綺麗で、まるで絵本の世界に迷い込んでしまうようなやわらかな語り口でした。それが剣や魔法の世界とは紙一重を隔てた不思議なファンタジーの世界を演出していて、この「狼と香辛料」という物語をとびっきり素晴らしいものにする「香辛料」の役割をしているのだと思います。
これが銀賞で、時を同じくして「ミミズクと夜の王」が金賞を取っているというのだから、昨年の電撃大賞はどれだけ凄かったのかという話でもあるし、逆に言うとこのようなちょっぴり異色の二作品があったために割を食った作品も少なくはないのではないかという同情のような念も少々。(勘違いでした。でも両作品が結構異色な感じがするのは気のせいではないと思います)
ともあれ、読み終わる前に生協に続刊の注文を出したことは間違いのない事実。届き次第まとめて引き取りに行こう。
年明けからはアニメ見なきゃなー。

*1:血縁の意味の娘ではなく、女の子という意味での娘、つまりは「娘っ子」