月とペンギン〜アイドルマスター XENOGLOSSIA最終話〜

やばい……。感動した。
今期良かったアニメランキング感動部門第一位かも知れない……。熱血部門はグレンラガンで、でも総合的にはどっちが上かわからないくらい良かったです。
うわあああぁぁあ。とりあえず朝から二回見ましたよ。もうBパートは涙無くしては見られませんよお。
そしてDVDの公式ふれこみが「私たちとアイドルの愛の劇場」ってどーなん! 見終わってみたら確かにこれは恋愛ものですが!!
以下続きで感想がずらっと。

復興歴108年の意味

アウリンの意味とか、終盤はちょっと詰め込みすぎの感じがしましたが、結局はまあ落ち着くところに落ち着いたかなあと(というかアイドルが未知の存在という設定を存分に生かして、逆にアイドルなら何でもありか、という感じで)。
見直して確認しましたが、テル・ロ・ウがアウリンをどう解釈していたかはよくわからないままですが、アウリンというのは結局ロストアルテミス後に月の代わりをしていて地球と月のバランスを取っていた存在ということで、良いんでしょう。そしてアイドル達の故郷とも言うべき世界と繋がる入り口でもある。さらにはアウリンそれ自体が意思を持つように振る舞うこともあり、自らの消滅を防ぐ自己防衛機能のようなものは持っていると。加えて、恐らくアイドルコアが消滅したらその存在はアウリンへと帰ると。
人類はロストアルテミス後にアウリンがあったお陰で今まで生き延びることが出来たが、そのアウリンの所為で今逆に危機に瀕しているというのがポイントですね。人類の持つ技術ではどうにもならないものを、アイドルという存在がどうにかしてくれる。人間に恋をした神様が人間を助けてくれる、と言うような構図がここにあります。惚れた弱みは強力なのですね。

春香の想い〜最初のペンギン

前回春香が雪歩の元へ赴き本音でぶつかり合いをした結果、雪歩の心は千早の誤りを認めてある意味救済されたと言っても良いと想うんです。けれど、春香の視点から見れば結局最後に雪歩と自分をウルトゥリウスから助けてくれたのはヌービアムで、そのヌービアムがその身を挺して自分たちを助けてくれたと言うことに少なからぬ衝撃を受けているようです(春香的にはインベルが彼氏で、アイドルは極めて親近感を感じる相手のため)。しかも雪歩がそのまま意識を失っているので彼女が最終的にどういう想いに達したか、恐らく春香はわからないまま。これは、春香が自分の無力さを痛切に感じてその先の未知を見失う分には十分な原因ですね。
インベル達が自分たちだけでアウリンへ向かい、全てに決着をつけるという意思を見せている中、それをどう受け止めればいいのか。馬鹿みたいに一途に突き進むのが取り柄の春香がそこで悩んでしまっては話は進まない、と言う場面を最終回まで来てやるのは流石の展開ですね。アイドルマスターからコンバートしてきたキャラクターの中で一人蚊帳の外におかれているやよいがここで真価を発揮するわけですか。前回は本当に何故やよいがわざわざ春香の元へ向かうのか意味(やよいの意思という意味ではなく、ストーリー展開状の意味)がわからなかったんですが、阿吽の呼吸で全てを語らなくてもお互いの考えていることがわかる春香とやよいの関係が、ここへ来て話にぐっと情感を与えてくれています。大事な人だから、心配を掛けたくなくて最後まで全てをは語らずにアウリンへ向かう春香と、そのことを感じ取ってしまいながらも止めることは出来ないやよいの、お互いを思いやる友情が最後にきらりと輝く。まあ、アイドルと人間の恋だけではあまりに色物過ぎるというのもあるかも知れません。
最初からペンギンと春香が良く関連づけられてはいたものの、私はその意味が今ひとつわかっていませんでした。恥ずかしながら「最初のペンギン」の意味は課長の説明を聞くまで知りませんでした。調べてみると本当に最初のペンギンというのは英語圏でfirst penguinとして使われる言葉のようですね。その最初のペンギンである春香。後のことにうじうじ悩まず、思い切りよく飛び出す。その勢い出回りを牽引する不思議な力を持つ春香はまさにfirst penguinに他なりませんね。
初期のドロップ除去作業編(?)や中盤以降の活躍で、結局は伊織も真も春香には一目をおくことになり、最後は結局春香とインベルに任せるという最高の見せ場を作る役に回りました。
そして、涙無くしては語れない別れ。

高槻やよいの持つ意味

やよいは、ごく最近までアイドルマスターチームの存在を全く知らないまま十六夜寮の住人達と友人関係を築いていたんですよね。
春香の親友として押しかけ、伊織と妙なライバル関係になり、んでもって律子のおもちゃ。さらにはそう言えば芸能界つながりで亜美とも知り合いだったというのが、一度公開収録があって密かに伏線張られてましたね。
あくまで知らない立場から、それでも鋭い指摘を行うという、春香の親友としての立場がやよいに与えられた立場でした。アイドルのことを殆ど知らず、ましてやトゥリアビータとの抗争など知りもしないやよいだからこそ外の立場から見て春香に的確なアドバイスを送れるというのが今までの重要なポイントだったと思います。
今回はそのやよいも仲間はずれ卒業で、春香の親友として彼女の戦いぶりを地上から見上げる一員となり、そして、彼女のことを元気づけ、彼女をもっとも近くで出迎える存在となりました。
アイドルと深く関わらないからこそ呆気ら鳴かんとした空気を持ちこむことが出来る彼女の存在は、今までのシリアス展開中ならともかくここまで事態が切迫した最終回ではむしろ他の人物達をリラックスさせる存在として重要な意味を持ったのではないでしょうか。
まあ、そんなことをふと思いました。
個人的には亜美の「あれは良いペンギンさんだから」というのが面白くて仕方がなかったですね。OPのカットがこんなところで生きてくるとは……w

アイドルマスターとして

色々あったけれどモンデンキントに戻ってきた真。課長には「強くなりなさい」と言われ、そこへヒエムスの決意を聞かされる。あくまでクールに流すようなそぶりを見せる彼女も、伊織の「アンタ、このままで良いと思う?」という言葉に少し心が動かされるという、真と伊織の絡みが良いですね。
序盤からネーブラのマスターの座を争い、互いにライバル視しあっていた真と伊織(多分真もクールに装っては居ても伊織のことをある程度はライバル視していただろう)。前回ネーブラがヒエムスに一発活を入れてチャラにして以降、この二人のコンビネーションがますます冴えてきてますね。
そして、三人のアイドルマスターがアイドルとともにアウリンへ向かうと、レモン以上のドロップが大量に。アウリンの自己防衛機能が働いた、と見ればいいのでしょうが、流れとしてはやや唐突である感は否めませんね。まあ、格好良かったからOKです。ネーブラの爪による破壊。ヒエムスはトゥリアビータ仕様だから完全戦闘用の筈なのに銃を巧みに使ってドロップの破壊。そしてインベルのメガトンパンチ。微熱S.O.S!!を挿入歌としてドロップを除去する彼女たちの雄姿は、最近のアイドル同士の戦闘とかそのあたりの殺伐とした空気の中で忘れかけていた、アイドルはドロップを除去して地球の平和を守る存在なんだ、という事実を思い出させてくれました。展開が熱くなるのは良いけれどそれで最初のテーマを置き去りにするのは良くないです。そう言う意味でこのシーンは重要。春香の「それが、私たちアイドルマスターのお仕事!」という台詞が決まってましたね。

彼女たちを支える人たち

特に整備班の意地が光った気がします。
ピンクインベル・メガトンパンチ仕様。「完璧なネーブラを見せたるからな」とか、いちいち台詞が格好良いです。惚れます。アイドルマスターではついついアイドルとマスターの関係にばかり目がいきがちですが、よく考えてみれば整備班が居なければアイドル達がまともに動くことは出来ないわけです(元々はコアだけなんだから)。
前回はピンクインベル・メガトンパンチ仕様は夢の中だけの機体かな、とか書いてましたが、こうしてドロップ除去というアイドル本来の仕事という最高の場面においてその活躍の場が設えられたのは、演出として最高ですね。最後は前半OPに出てきた春香、真、伊織という三人のアイドルマスターで締めるというのも、いいです。
しかし、本当に胸に穴の開いてしまったインベルを修復して色まで塗り替えたのは凄いと思いますよ、ええ。いつの間にかメガトンパンチを回収しているのも。
あとは、課長ですかね。アイドルとマスターの関係は、アイドル=男、マスター=女。男である課長は基本的にこの関係に混じることが出来ず、あくまで補佐をすると言うのが仕事の基本でした(整備班まで殆ど女性の意味はよくわからないけど)。結局、最後まで春香たちを送り出すというその役目を果たすことしか出来ず、死を決意した彼女らを送り出したその責任を自ら背負うことが彼の役割だったわけです。うん、こういう風に縁の下で支える人があって初めて色々なことが回るんですね。
最後に、朔響のヘタレっぷりが何とも言えず……。まあ、何とも言えません。彼も存外小物でした。第二のグランロッジのネコにはなれませんね、あれじゃ。

決意と別れ

「私一人くらいはインベルのために命を賭けたいんです。いいよね、インベル? 駄目って言っても聞かないよ」この春香が彼氏に囁く甘い台詞をどうにかしてください。こう言うのに弱いんです。
決死のアイドル達のために、彼らがその力を最大限発揮できるように一緒に行こうとするマスター三人、彼女たちは、しかしそんなに簡単に命を賭けても良かったのでしょうかという疑問が残ります。自分たちが地上でぬくぬくと待っている間にアイドル達が何とかしてくれると言うような他人任せの姿勢が似合わないことはよくわかっている。けれど、アイドル達が何のために自分たちだけでアウリンへ行こうとしているのかという意味を考えると、彼女たちがそれについていったことはなかなかアイドル達の意思を汲まない行為でもあるわけですよね。恋愛ものに不条理はつきものではあるのですが、彼女たちの我が儘を聞く振りをして最後の最後では突き放すのも、漢の生き様ですよ。
そう、ヒエムスやネーブラは知らないけれど、インベルは春香を護りたかっただけなんですね。そのついでに地球も救っちゃうというか。最後の最後でコクピットをイジェクトする。この場面は、行為としては23話で千早をイジェクトした場面と同じですが、込められた思いは全くもって異なるものとなっています。今インベルが春香を突き放したのは、春香という大切な人に生きていて欲しいから。自分が一緒に道連れにするわけにはいかないから。ここで春香を生かせないなら、自分が死ぬ意味なんて無いから。そう言った決意を胸に一人アウリンの中に残り、故郷に反旗を翻して、春香のリボンをその手に握ってメガトンパンチを繰り出すインベルは……漢だぁ! リボンを握りしめるシーンはほろりと来ましたよ。勿論その前のインベルと春香の対話も。あそこで安易に「アウリンの中だから」とか言う理由でインベルに声を当てなかったのは大正解ですね。もしあそこでインベルが本当に喋っていたら、きっと感動は半減していたでしょう……。
ネーブラとヒエムスの死に様も存外大したものでしたね。アウリンの表面は固く、そのままではコアしか受け入れない。そこにヒエムスとネーブラの力でもって穴を開け、インベルを突入させるとともに自分たちは爆発。恐らくこの爆発の際に真と伊織をコクピットごと脱出させ、更にコアをアウリン内へと注入(或いは爆砕によりコア消失→アウリンへと帰還)したのでしょう。伊織と真は、恐らくこの時死を覚悟していたはずです。後は春香がどうにかしてくれるという期待を胸に死んだつもりだった。けれど、自分たちが惚れた女をこんなところで死なせたら漢が廃る。それがアイドルの生き様。すげー。もうアイドルがいちいち漢らしくて仕方がない。
そして、アイドルの爆砕とともに咲く花。あの花はきっとアウリンによって生じていた歪みを正常化する作用の視覚化で、さらにその後に現れた十字はアウリンに変わる新たな月の代用品。それはきっとアイドル達がここにいた証。彼らは星よりももっと近くで春香たちを見守って居るんです。
最初のペンギンとして勢いよく出て行って、そして仲間の待つ地球へと帰ってきた春香たちを。
マスターキーが粒子化して行く時に「ダイスキ」と残ったのは、うん、その後の春香の「バカ……、知ってるわよ」という台詞の為なら許せる。やっぱりインベル達アイドルが直接的なり間接的なりに言葉を発するのは、最後まで違和感があるんですよ。でもどうにかして言葉を伝えなきゃ、この応答は出来ない。うーん、苦肉の策、ですかね。ともかく、春香の台詞で胸がぎゅっと締め付けられました。うわああああん。

その後

下手に春香以外のその後を描かなかったのは、きっと正解ですね。雪歩なんかは非常に気になるところではあるんですが。雪歩とヌービアムの関係を描いた裏話が欲しくて仕方がないです。22.5話くらいで。
それにしても、春香はアイドル続けてたんですね。これでアイドルとして頑張って、その所為でインベルとすれ違ってしまったというあの要素も中途半端でなく回収されます。あの時春香はインベルに聞いて貰うため、もっと違う自分をインベルに見て貰いたい為に頑張っていました。今アイドルとして頑張っている春香の歌は、きっと空のインベルにも届いています。


感想は大体こんな感じですね。
あー、ほんと、予想外に良かった。DVD買おうかな……。正直迷う。レンタルで済ませようかと思っていたんですけれど……、近日中によしけむがオタメイトに行ったらきっと目的は……;
そんな感じです。
惜しむらくは、よしけむの周囲にこれを見ている人が少ないと言うことですかね。
多分、いずれまた総括的なことを書きます。