“文学少女”と穢れ名の天使(アンジュ)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

ほぼ二ヶ月前発売の本ではあるのですが、生協が受注キャンセルを繰り返し(要するにキャンセルされてもしつこく発注し)、ついにこの間諦めてジュンク堂で買ってきたわけですよ……。
“文学少女”シリーズもこれで四作目。前回から美羽の影がちらほらとしてきて、段々物語が深まっていく気配を見せる本作。
我々はツンがデレに変わる瞬間を見る。
かねてよりツンデレ疑惑のあった琴吹ななせ嬢でありますが、今回は一作目よりその何とも言えない素直じゃない態度にやきもきしていた彼女がメイン登場人物となるお話。
うぅむ、色々引っ張っておいて琴吹さんと心葉の中にこじれたり気になったりの関係を作り出しておいて(具体的には病室で心葉に怒鳴ってしまったりしたことで一層心葉に対して素直になれないななせ)、さらにはななせの友達なんかもうま〜い感じに動かしてとことん彼女にツンデレの「ツン」を演じさせて、それでいてふとした瞬間に見せる弱い一面で心葉を一撃必殺!
ちょっと違うけど、でも琴吹ななせはなんともまあ綺麗なツンデレであった。
そもそもツンデレというのは物語を何度か繰り返すことを前提で、ツンからデレへと変化するキャラのことを時間軸に沿わない神の視点で呼ぶ様な呼称であると思うのですが、デレへと変化した後も継続的にツンデレキャラと呼び続けても良いものでしょうか。
その辺り、どうにもよく理解していないyoshikemです。他人が居るところだときつく当たってしまう「二面性タイプ」のツンデレなら話は早いんでしょうけど。いや、ななせが引き続きツンな態度をとる可能性は否定できませんか。

話の内容について。
今回はかの有名な「オペラ座の怪人」を土台に敷いた話です。どうにもミュージカルや映画の人気が先走っている気はしますがアレも元々は文学作品。もっとも原作を読んだことはありません。
遠子先輩が突然の休部宣言、そう言えば遠子先輩は高校三年生で受験生だった。
ということで心葉に突如訪れる文芸部のない日常(もっとも遠子先輩はおやつは毎日書くよう厳命しているのだけれど)、そんな中でも心葉のもとにはやっぱりトラブルが舞い込んできたりするのであった。
きっかけはひょんな事から。ななせと一緒に音楽教師毬谷の手伝いをするうちにななせと今まで以上に話をすることになり、突然彼女の親友の夕歌が失踪してしまったということの相談を受ける。
そして彼女の行方を探るうちに舞台は音楽の学校へと移り、予想もしない人物が予想もしない素性を明らかにして……。
毎度毎度面白いのですが人間の壊れ方がちょっと苦手だったり……。
今回にしたって、最初のうちはいい顔をしていた色々な人が実は……、といういつものパターンですし。
まあ、苦手なだけで嫌いまではいってませんし、自分に馴染みがないと言うだけでそのうち慣れるかもしれませんし。

今回は心葉の考え方が少し変わる回でしたね。
琴吹さんとの関係が変わることで、自分もいつまでも美羽に縛られていなくてもいいのかも、と思い始めていますね。
何よりも大きかったのは水戸夕歌が「井上ミウ」の本を好きだったという点。過去の過ちとして憎むべきものでしかないと認識していた井上ミウ、その本でも人に何かを感じさせることが出来たということ。何よりも、あの本の中に書いたことは何よりも当時の自分の真実だったと言うことにようやく思い至ったようです。
それで、美羽に対しても後ろめたさを感じながらも、「許してくれるかな」とややポジティブに考えることができはじめているようです。

一方その裏では美羽が徐々に動き始めているようで……、芥川君経由でなんでしょうか、ななせに直接攻撃を仕掛ける様子ですね。
うーむ……、女の愛憎劇?
びくびく。恐いですな。
知らぬは男ばかりなり……。心葉の知らないところで一体何が起きるというのか。いざというときは芥川君が止めに入ってくれるものと信じて、八月末発売の新刊を心待ちにす。