アンダカの怪造学VI

日日日アンダカの怪造学シリーズ、これまたずいぶん前の本ではありますが、ようやく読めました。
おぉう、表紙は、この青い髪はカービィちゃんではありませんか。
今回は今まで地味にサポートをしたり伊依の心の支えなどを中心にしてきた(4巻ではナイトメアナイトとのコンビネーションで実際に活動したりもしてましたが)魅神香美にフォーカスをあてた話ですね。
一巻からエリート且つ怠け者として描かれていた伊依の良き親友であり理解者、そんな彼女と諍いを起こしてしまったところから物語は始まります。

流石に……、マンネリ化を感じてしまいました、ね、今回の話は。
このアンダカの怪造学というシリーズ、恐らく作者の日日日の頭の中には壮大に広がる様々な物語が広がっており、しかも1〜3巻が第一部のいわば《出会い編》、4〜6巻は《代理戦争編》または《ヴェクサシオン編》とまとまった巻数で特定のテーマを取り扱っています。
第1部はともかく、どうにも第2部は若干マンネリ化をしてしまうくらい同じ流れで進められていますよね……。
第二部のテーマは思想の広がりと伊依のパワーアップ。幾つかの事件を解決に導くことによって周りから一層の信頼を得ていく伊依は確かな自信を身につけていき、事件を解決する過程で中心人物を仲間にしていきます。
ここには常に以下の類型があります。

  1. 伊依に思想信条様々な理由から敵対する人物の登場
  2. 敵対人物と伊依の決定的な対立
  3. 事件に当たるうちに伊依にそれとなくほだされていく敵対人物
  4. 敵対人物との和解と強大な敵への共同戦線
  5. 撃退

しかも、この第二部では大体アンダカの強力な怪造生物が敵=黒幕で、人間の登場人物とは殆ど和解できるわけです。
敵対人物から和解へと持ち込まれるのはそれぞれ戯小路アルテ、虎島罠奈と無城鬼京、志田桐涼女のそれぞれの人物で、彼・彼女らは伊依のまっすぐな気持ちをぶつけられるうちになんだか自分が意地を張って敵対していることがバカらしくなり、或いは渋々或いは完全にわかり合って伊依との共同戦線を結ぶことになる。その後も友人で居続けるかどうかはキャラごとに異なるが。
この和解のプロセスというのも、殆ど一緒なんですよね、毎回。
まあ、それでも面白いのですが……、大体途中でこの後どうなるか、どんな話の流れで二人が和解していくのかが分かってしまうんですよね。最後の一撃を決める伊依の「仕掛け」がどんなものかまでは流石に分からないんですけどね。
毎回同じ類型で一定のテーマ「パワーアップと思想の広がり」を描きながら、徐々に深く入り組んだ物語を解きほぐすのがこの第二部の骨子であるとはいえ、流石にちょっと、と言う気はしないでもないですね。次巻以降《魔王編》でこのマンネリが打破されると期待しております。

さて、話の中身の方ですが、今回は伊依が舌戦を繰り広げようという手前でいきなり舌を斬りつけるという危険なにおいのする少女、志田桐涼女が敵対人物。
なるほど確かに、第一部でのテーマである「様々な弱小モンスターを駆使して強大な敵を打ち破る」に対比する形で4,5巻で「相手と話し合って説得する」という事をピックアップしていることもあり、いきなり舌を斬りつけて話し合いの余地が全く見られない涼女は今までの敵とは若干雰囲気が異なる感じでしたね。
なんせ悲哀大公さえ舌戦で怯ませた天下無敵の空井伊依さんですから、これ以上舌戦ばかりしていてもそれは興ざめという感じもありますか。
そんな、話を聞いてくれない彼女とガチンコバトルを繰り広げるのは、新入生歓迎イベントとして魔王杯と題された怪造生物障害物レース。参加者が自らが怪造した怪造生物に乗り移ってレースをするという、今までは想像の中でしか語られていなかった怪造生物の感覚を伊依達が知ることになる貴重な機会。これは多分「怪造生物は友達」という思想を受け入れた古頃の生徒達にはこれからの生き方に大きな影響を与える出来事でしょう。今回の経験がこれからどう生きてくるのか、見物ではありますね。
今回はヴェクサシオン編の締めくくりと言うこともあってヴェクサシオンの正体についても明かされていましたね。
どうにも……、ヴェクサシオンに関してはあちこち腑に落ちない点があるというか、どうにも伊依の周りに重要人物が不自然に集まりすぎているという感じがあるのですが……、それについては一読者がどうこう言ったって仕方がないですので……。

なにやらザ・スニーカーアンダカの怪造学に出てくる大人達が若い頃のストーリーが連載されているらしいですね。「ジャンクガール・ジグ」というタイトルらしいですが。
ザ・スニーカーは別に購読しているわけではないので、単行本化待ちですかね。