転校生 さよならあなた

四限の生物学実習が早めに終わったので、映画に行ってきました。
前から少し気になっていた大林宣彦監督作品の「転校生 さよならあなた」です。
山中恒の「おれがあいつで、あいつがおれで」を原作とする1982年の映画「転校生」のセルフリメイク盤です。
原作も、あと同じ作品を原作にするNHKドラマの「どっちがどっち」も結構好きで、実は発表から割と気になっていたんですよね。
以下ネタバレ模様
まあ、なんていうか中盤以降は驚愕の展開でしたけど。
序盤、何でもかんでもあけすけに喋る一美の様子とか、入れ替わり直後のどたばたコメディの様子は期待を裏切らない良いクオリティでしたね。(以下一夫の肉体に一美の精神をカズミ、一美の肉体に一夫の精神をカズオと表記)
視点は基本的に一美中心。まあそれはお約束と言うことで。
映画だと結構やるとこまでやっちゃうんだなぁという感じで、入れ替わり翌朝にカズミがカズオの元を訪ねる場面で、ブラジャーをつけ直すシーンとかもきちっと描写していて……(エロティックな映画という意味ではありません。断じて)。
原作を拾うという意味では教育長の放蕩息子に襲われそうになって逆に金的蹴り追い払うところがあったりして、入れ替わりという要素の面白さがもっとも生かされたのはあの場面だった様な気がしますね。
私は82年版転校生を知らないから、勿論そのストーリーも知らないわけですが、カズオの体が原因不明の難病にかかって以降の展開は驚愕としか云いようがなかったですね……。あれは82年版でもそうなんでしょうか。病気の原因が不明という辺り、何となく昔の映画で使われたストーリー回しという感じもしますね。
弘がカズミとカズオの事を悟ってそれ以降良き協力者となったり、連絡をとって明美も良き協力者となったりという青春ドラマ的展開は大好きなのですが、どうも「どこかへ行っちゃおうか」以降のストーリーがあまりにも狙いすぎで違和感がたっぷりという感じがしてしまったのは事実です。それでもまあ面白かったのですが。
現在の社会状況と合っていない(やや違和感がある)点も幾つか見受けられましたし。具体的にはやっぱり演劇一座の人に拾われてから逃げるまでの展開がどうにも古くさい。
なんのかんので元恋人とか色々吹っ切って目的不明の二人旅をする二人が同じ布団で寝てから、同衾最後までいっちゃうのかなとか思いつつ最後まで行かず、そこはやはり青春映画であるというわけですね。ただカズオの胸にカズミがほほを寄せる場面などはよくやったなぁという感じですね。

幾つか納得いかない点がある。
一夫(カズオ)のエアピアノはちょっと見ていて違和感がありました。ピアノやってる人ってあそこまでエアピアノをしてしまうものなんでしょうか。特にラストシーンで一美の歌に合わせて一夫がエアピアノをしているシーンは見ていてどうにも変に見えて仕方がなかった……。
あとは、色々描き切れていない感じがした点とか。一美が物語の世界に行っちゃうって言うことが、結局周囲の人間の話からしか分からなかったので、どうせなら一夫をそれで混乱させるというのが入れ替わり前にあった方が良かった気がしますね。
まあ、あとは一美が死ぬって言う展開が基本的に納得いかない。
「おれがあいつで、あいつがおれで」はあのとことんコメディっていうストーリーが良かったし、だからこそ七転八倒の末二人が戻った時に「あぁよかった」と読者は胸をなで下ろして感動できるわけです。
だけど、このラストは本当に重かったなぁ……。まあ、入れ替わったままカズオが死ぬというのも考えがたいけれど……。むぅ……。
総合的には良い映画だったと思うんですけどね。