アンダカの怪造学Ⅴ

角川スニーカー文庫というと昨今涼宮ハルヒブームが激しいですが、今年一年を見るならハルヒはどうもメディアミックス面での伸張が目立つばかりで肝心(?)の本は五月に出たきり。一方で年間三冊、適度なペースで出続けているアンダカの怪造学の方が、僕にとってはスニーカー文庫の顔のような気がします。まあ、あとスニーカーで読んでるのはマキゾエくらいなんですが……。
てなわけで新年早々発行されていたアンダカの怪造学第5巻です。
とりあえず戯小路アルテ再登場ばんざーい。肉体道楽=ヴェクサシオンはこれからも重要な鍵として絡んでくるみたいですけど、伊依の前に出てくる時はツンデレラのアルテ嬢で来ることに成るみたいですね。あんまり必然性がないような気がするけれど、アルテ嬢は好きなキャラなので良しです。
そしてまさかの已己巳再登場。予想してなかった……。前回の流れでもう完全に喜悦大公と虚無大公は蚊帳の外だと思ってましたから……。まあ、そんなでかい存在を相手取るには流石に大公を味方に付ける必要があると言うことですか。折角已己巳は伊依や遊とも友達なわけですし、出さない理由はない、か。

などと4巻で登場したキャラクターたちも(故・喪時飽友は勿論除く)再登場しつつの愉快なお話なのですが、今回のテーマはズバリ「学園祭」。
そう言えば夏休み明けて色々ありつつ、学園祭&体育祭はなかったなぁ、と改めて本作が学園ストーリーだったことを思い返しました。
三大怪造学校の内二つが崩壊して統合されるということになり、どう考えても強権発動したとしか思えないのですが古頃怪造高等学校を中心に学校統合がされた新生古頃怪造高等学校が舞台。
となると、他の学校から来た人とトラブルが起きたりするのは当然なのですが、今回伊依がぶち当たったのは思想上のトラブル。前回伊依の思想に共鳴してくれる人が沢山現れたことを受けて、今回は彼女の思想が広まるだけでなく具体的な形を持って一歩前へ進むという話です。その為には勿論敵と切磋琢磨することが必要であります。また対立とは別方向で、彼女の視野を広げてくれる人も出てきます。そうして空井伊依のアンダカの怪造学はより多くの人に伝わっていき、より確実な未来へと近づいていく、これはそんなお話。
今回は大公たち=モンスターが裏で糸を引いてずっと暗躍しっぱなしで、逐一その様子が描写されていたんですが、その分現実面で伊依たちの周りでモンスターがトラブルを起こすという場面は少なめでしたね。実質的に伊依が何かを怪造して同行するという場面も中盤に一回あっただけ、そもそも桃子ちゃんが出てきてないですし。
桃子ちゃんは一巻で死んで復活したあとは超強力な、アンダカでも実力トップクラスのモンスターになってますからね、今回伊依が説いた彼女のアンダカの怪造学とは若干ずれるところもあったし、出番無しはある意味納得なのですが……。そう、そう言う意味で彼女の現在の理論では強力なモンスターと友達になるのは難しいという難点を孕んでいるのです(モンスターを身近にとどめておくと言うことがそもそも困難な場合は諦めろと言わんばかり)。その問題点がこれから解消されていくかどうかは……、見所と言ったところでしょうか。
この小説初めから表の怪造学と裏の怪造学の物語が織られているのですけれど、今回は裏の怪造学、すなわち怪造学会の方にも少しばかり重要な動きがあったようで、どうやらこのまま行くと伊依は怪造学会を敵に回しそうな雰囲気です。やはり魔王という存在はそれほどヤバイようで。
ついでに、舞弓と物造にも色々隠されたことがあるらしいですよ。
これからどう展開していくのか、楽しみです。

まー、なんだかんだ言って今回の一番のポイントは冥土侍=メイド侍=メイド服で機関銃を連射する舞さん=ほんの少し前には「お帰りなさいませご主人様♪」ってことですよ。遂にアンダカの怪造学の世界にもメイドさんの波が……。
メイドさん姿の舞弓の全身像イラストが見たかったのは僕だけでしょうか?