“文学少女”と飢え渇く幽霊



「愛憎」という言葉があるように愛と憎しみは対で語られる、正反対でありながら紙一重の人間の基本的な感情である。この“文学少女”シリーズはどうやら愛と憎しみを軸に繰り広げられている物語であるらしい。
今回は幽霊騒動を発端として親子二代にわたる愛と憎しみと、そして愛の物語が文学少女によって読み解かれる。その間遠子先輩が暴走したり同級生琴吹ななせがツンデレぶりを発揮し始めたりと、伏線を膨らませることも忘れていない。
心葉の幼なじみの美羽との間にあったことは一巻で大体想像がつくのだが、今回はそれに対する心葉の捉え方が提示されていて、彼の心の闇がこれまで見てきたものよりも深いものであったことが知れる。果たして遠子先輩の透明な優しさはその闇を払えるのか、それにどうやらななせは美羽と何らかの関係があるような節でもあるし、気になる。
ところで今回は、一巻では情報屋としてポンと出てきただけの“姫”がずいぶんな立ち回りを演じる。前回同様傍観者だと思っていて痛い目を見た。
愛は人を狂わせる。嵐が丘に吹き荒れる愛憎は果たして甘いのか、苦いのか。遠子先輩に訊いてみよう。