マキゾエホリック

マキゾエホリック Case1:転校生という名の記号 (スニーカー文庫)

角川の新人、東亮太さんの書いたマキゾエホリック、第十回角川スニーカー大賞の奨励賞らしいですね。
涼宮ハルヒの憤慨と同じ五月に二巻が発刊されていて、目にとまったから生協で注文してみましたという、非常に偶然的な出会い。
因みに「ホリック」というのは〜〜中毒とか〜〜狂とかの意味を作る接尾語で、このマキゾエホリックというタイトルは本書のタイトルとして主人公高浪藍子の性質をきわめてぴたりと言い当てた、非常に的確な「記号」であるかも知れない。
まさに受難で記号化される彼女が暴れ回るこの小説にぴったりなわけだ。
導入はいきなり主人公が転校先の学校で在籍データを失っている、と言うところから始まり、世界観としては超常現象なんて何一つ無いはずの世界なのに主人公とその周り、つまりは御伽学園の周辺においてのみ超常現象は何でもありという、ある意味無茶苦茶な世界である。
なんせヒーローあり、改造人間あり、超能力少女あり、巫女さんあり、メイドさんあり、マッドサイエンティストあり、ドラキュラあり……、こういったライトノベルだとかファンタジーだとかの世界に登場する存在でこの話に出てきてない者を挙げろと言われると、果たしてそんなものあるんだろうか。
そんな風に何でもかんでも豪華に詰め合わせた感じがする1年乙組が本編の舞台となる。
それでいて作りはミステリー仕立てで、伏線もあちこちに張り巡らせては綺麗に回収していて、なかなか凄い作品である。
最後に読後感を挙げるとするならば、なんだか妙にすっきりとした感がある。というのはきっと最後は「子供が大人をやりくるめる」形で決着がついたからだろうと思う。
児童文学に多い、悪い大人を子供がやりくるめる物語、それを一風変わった舞台で一風変わった形式で繰り広げた本書は、なんだかんだ言ってさわやかな読後感を提供してくれる。