京都大学節電プログラムの実際(笑)

さて、先日京大が「節電プログラム」なるものを発して、世間的に「うち、節電してますから(ドヤァ」という態度を示したのがニュースになりました。
京大 最大15%節電(YOMIURI ONLINE)
節電プログラムは節電段階をフェーズ0からフェーズ5間での6段階に分割。
例えば0ではエアコンは28度固定、1では証明を5割まで削減したりOA機器の集中化などを図るといった具合に節電をする動きを定め、これを各部局に強制力を持って実行させていくというものです。
とりあえず7月からはフェーズ1が始まるらしいです。

エアコン設定28度の是非

ていうところで、まずフェーズ0って何者なのか、と言う疑問が湧いたりするのですが、そもそもエアコンの設定温度28度に固定するってことは日頃から義務化されるということになるのですかね? 今年に限らず。
まず、エアコンの設定温度28度という事について、すこし触れたい。
例えば以下に示すような記事で話題になっているのだが、エアコンの設定温度28度というのは効率と快適さを秤に掛けた折衷条件でもなんでもなく、今ひとつ根拠に掛ける設定温度なのである。
クールビズ「28度」に根拠なし、暑すぎて効率低下
チームマイナス6%の冷房28度設定は、根拠なし??
実際問題、エアコンを28度に設定すると扇風機なしではちょっとキツイ。
大学の研究室をはじめとして、多少なりとも棚のある部屋の中に風の巡りの悪いところが出来ようものなら、そこはかなり蒸し暑い空間になるのではないだろうか。
大学が研究機関として存在していることを当局がきちんと認識しているのならば、節電することによって不必要に研究効率が下がるような事態を防ぐべきなのに、当然節電プログラムを実施するに当たっての扇風機配備などは行われない。
頭ごなしに「節電せよ」というトップダウンの命令を押し付けられるだけである。これは非常にスマートでない。

電気使用を控えるのでなく、無駄な電力を減らすことへ動くべし

というとあたかも「節電しなくていいじゃん」というように聞こえるかも知れないが、言いたいことはそうではない。
まずスタンスをはっきりさせる為に、多少極論から入る。究極的には、夏場のいわゆる電力ピーク時間帯(12時〜16時頃)にエアコンを使用しないのは、不可能だと思う。

「昔はエアコンなんて無かったんだから」というような人は昔と今の平均気温の違いを調べてみて欲しい。
日本の8月平均気温(気象庁)
なんだ、あんまり上昇してないね、という人はグラフを今一度よく見て欲しい。どうだろうか。昔に比べて、全体をならした温度上昇傾向(赤線)から実際の各年の気温のばらつき度合いが大きくなってはいないだろうか。
これはつまり、近年になるにつれて「冷夏ならかなり涼しいけれど、猛暑ヤバイ」という傾向が大きくなっていると言える。
そこで注目するのが2010年の気温ですよ。
1980年頃の平均気温と比べて、実に2度ちょい上昇しているわけで、二度違ったら大分違いますよ。まあエアコンなしでも我慢しようかっていう日はかなり増えるんじゃないでしょうか。

閑話休題。エアコンはこの夏必要なわけですよ、多分、きっと、絶対。
なのに、今京大に広がりつつある方向性は、実は「エアコン使うな」に近い。
28度設定で使うことは多分問題ないと思うのだが、それ以上に必要以上のプレッシャーからとにかくエアコンを使わない、電気を使わない方向性にみんなの思考がシフトしちゃってるんではないかと思います。
いい例が、今日のカフェテリアルネ(生協食堂)の様子です。サークルの例会だったのでカフェテリアルネへ行ったのですが、なんか暑い。
それもその筈、フロアの半分(調理スペースなどがない奥の方)、エアコン切れてますやん。窓際の人は窓を開けられるからいいけれど、奥の方は多分空気が淀んでサウナ状態だったことは想像に難くない。ルネはそもそも風通しの悪いフロア構造をしているので、5月でも気温の高い日はエアコン無しだと熱気が籠もることに定評があります。こんなことをしてたら「夜なのに、京大で節電熱中症!」なんて見出しが京都新聞を賑わす日も遠くはない?
そもそも電力ピーク時対策だったはずなので夜はある程度電力使用許される、という話になるはずでもありますし
とまあ、こんな感じで間違った方向に盲目的に節電思考が進んじゃってる感のある京都大学、本当に節電熱中症患者が出る日も近い気がします。
僕としては、京都大学のあるべき姿は節電思考よりも、必要総電力削減、ではないかと思っている。つまりどういう事かというと、こうだ。
「夏場電力ピーク時に100電力が必要だったところを、色んな効率化をすることでエアコンを使用していても80に抑えられるようにしました」
というところを目指せないんだろうか?
そして、その姿勢を作ることで、「電力削減は当局で努力するから、学生教員はある程度節電を意識しつつ研究に励め」という風に持っていくのが大学当局のあるべき姿なのではないだろうか?
言ってみれば、電力ピーク時に電力需要が高まるのは「暑いから冷やさないと仕事にならない」という必要性に狩られてのことである。
必要なモノを削り込むと、必ずどこかで無理が出てくる。勿論、ピーク時間帯の電力使用を最低限に済ませる為に節電意識(冷房設定温度を下げすぎないなど)を持つことは大切だと思うが、その前に刈り込むべき無駄は本当にないのか? いや、ある(反語法)。

建物を避暑化することでピーク時間帯を節電せよ

極端な話、現在行われている節電の目的は「電力ピーク時の電気使用を控える」ことで電力機器を回避することである(そもそも近畿で本当に必要な行動なのかどうかという疑問はなくはないが、近畿の原発も停止するかどうかと言う話があるのは事実っぽい)。
ならば、節電の為の投資というのは別に目的に何ら反しない。本当に節電と研究効率を両立させたいならば、その為に投資して節電快適研究環境を作る努力を大学はもっと行うべきなのではないだろうか?
その最も分かり易い例は、一つは既に述べた扇風機の話があるかも知れない。エアコン28度設定と研究効率を両立させるなら扇風機を各研究室に配備する(尤も既に持っているところもあるだろうから、希望を取って必要なところには予算をあてがう)べきではないだろうか。あとは古い冷房器具を買い換えるとかも有効かも知れない。


各部屋に赤外線遮断フィルムを配備するなんてのも効果的かもしれませんね。部屋を暖めないようにするのは、エアコンをつけた時の負荷軽減の意味でも十分効果が期待出来るんではないでしょうか。
うちの研究室はとりあえず8枚ある窓のうち一枚をアルミホイルで潰してしまいました。やり過ぎると部屋が暗くなるので、影響の少ない窓をまず一枚だけ、という感じですが。
もともと日のあるうちはブラインドである程度日差しを遮っていたので、そんなに劇的な差が体感出来るわけでもないんですが、多分以前より外から吸収する熱量は減ってるんじゃないかなぁと期待している次第です。


室外機ひなたぼっこ
最後に、一番どうにかして欲しい問題。というかこれ放置で「節電(笑)」はないわー、という問題が、少なくとも理学部一号館には残っているのです。
それが、この、エアコン室外機。
一号館のエアコン室外機は現在絶賛ひなたぼっこ中です。
屋上へは鍵が掛かっていて出られないので想像するだけなのですが、多分熱い。きっと熱い。絶対熱い。
エアコンの室外機は放熱の場なので、熱いと放熱効率が下がるのは必定。実際、エアコンの室外機に影を作ってやるだけで電力効率は随分違うようです。
どれくらい違うかは詳しくは知らないのですが、室外機の放熱効率で20%以上電力消費が違うという話を小耳に挟んだような気もします。
エアコン20%節減出来たらもうほぼ勝ちじゃない?
そんなわけで、今、このエアコン室外機を屋根をつけるなどしてどうにか改善して欲しい、と施設掛に嘆願する算段を練っているところです。
そもそも屋上には鍵が掛けられているので僕たちが出て改造するわけにもいかんし、屋上なのである程度しっかりした日よけ屋根を据え付けてやる必要があるでしょう。
となると施設係にちゃんと工事して貰わないといけないのかなぁ、などとも思うのです。

結局節電すべきなのかどうか

そりゃ、すべきですよ。そもそも節電という話自体は震災前からずっとちまちま言われていた話です。現代人はエネルギー使いすぎっていう話。
それが、震災で電力事情が少し変わってきて、一気に節電をすすめなくちゃならなくなった。だからこそのこの流れ。
みんなが節電を意識して生活スタイルを変えて、消費エネルギーが少なくて済む社会が出来るのなら、それはとっても素敵だなって。
でも、今起きているのはそういうのじゃない。なんかむやみやたらに節電をさけぶ一部の人の先導に乗って、みんな「電気を使うのが悪」みたいな意識を持って、非常に分かり易いところから使わないようにしているだけ。
その対象が一つはエアコンで、一つは照明。因みに多分PCは含まれていないと思う。結構電気食うのにね。あとIH調理器とかも含まれていないと思う。理由は必要不可欠だから。
必要だと割り切ってしまえば、使うのが人間の性です。エアコンだって、もっと夏が暑くなれば、みんな「必要だ」と割り切ってしまうのは結構目に見えている。
もしそこで我慢をしたらどうなるか? 答えは簡単です。節電熱中症。ここへ行き着くしかないんじゃないですか? 一気に高まった節電機運に、一部メディアからこの夏の注意事項として既に提示はされています。まあ、死者はこの夏出ちゃうんだろうなって思っています。
そう、エアコンは必要なのです。ならば、やっぱり「エアコンを使いつつ節電する」方法をもっとじっくり考えて、現実的に効率的に節電していくべきなんですよ。
そして、この節電機運の波に乗って、日頃では出来ない大規模な施設避暑化を行う。それがいいんじゃないでしょうか?
今なら「節電しなきゃ電力がやばいんですよ!」という大義名分のもと、少々予算をとって節電対策で赤外線遮断フィルム買ったり出来るわけですよ。
使うか使わないかではなく、効率よく使う、便利に使う、必要に応じて使う。そこをきちんと見定めて、新たなオフィススタイルを確立していく必要があるこの夏、京都大学にはエコノミーとエコロジーとエフィシェンシーの3Eを目指すことを期待しています。