ほうかご百物語

なんというにやにや小説……。

ほうかご百物語 (電撃文庫)

ほうかご百物語 (電撃文庫)

とりあえず物書きとしては百物語ネタ切れの解決からくるフィナーレのまとまりの良さに感服。
作品中で霊力の単位として「マイト」とかはないのか? と経島先輩が愚痴っていたのを読んでその聞き覚えのある単位に一瞬首を捻ったのですが……、なるほど、GS美神でしたか……。すっかり忘れていましたよ。
それにしても、前大賞作品「ミミズクと夜の王」とはぐっと対極的な、ある意味ラノベの鏡みたいなラノベでしたね。いや、良いと思います。むしろこういう軽いのは大好きです。二巻を買わざるを得ない。そして今まで積んでた自分にバカバカバカバーカ!
さて、本編は健気で頑張りやさんな化けイタチの少女が美術部員の白塚真一と「あなたをモデルに絵を描く」という契約を交わした事から始まる、ほのぼの温かい妖怪バトル小説(?)です。
作者があとがきで断っている通り様々な妖怪の伝承に曲解や恣意的な補完をかけた妖怪たちが現れるのですが、それでも「ああ、そんな話聞いた事ある」という風に感じてしまうリアリティを持った妖怪をどうにか倒したりスルーしたりしていく様は、読んでいてとても面白い。
個人的には一度倒された後また現れてはひと言であしらわれるのびあがりがツボに入りました。
でも何よりもこの作品で特筆すべきはあんまりにもアツアツらぶらぶの主人公とヒロインだとは思うんですけれどね。しかも多分二人はあんまり自覚していないorあからさまに描写はされない。だからこそニヤニヤして読める。
うん、ごちそうさまでした、と言いたい。
このヒロインを嫌える人っているんだろうか。イタチさんはとても可愛いし、健気で強くて凛としている一面もあれば照れ屋さんなところもあり、なんというか……ヒロインのイデア的な存在なのだが……。あうー、骨抜きにされそうだ。
で、そのヒロインと対照的なサブヒロインの経島先輩は僕の中では挿絵の姿ではなくあっちこっちの真宵の姿で再生された。とってもニヤッってます。