菫青石・翠星石・蒼星石

基礎地質科学実習の巡検でほぼ一日掛けて如意ヶ岳(大文字山)を縦走してきました。疲れた〜。
忘れないうちにまとめておこうかなと思い至りまして、こうして打ち込んでいる次第であります。

大文字山銀閣寺口付近
何度も登ったのに一度も意識したことがなかったのですが、大文字山銀閣寺口付近にはチャートの塊が露頭として見えて居るんですね。
今日改めてみてみると、なるほど、確かに層構造を成していてぼろぼろと剥がれる、それなりに風化しつつあるチャートが露出してましたね〜。
そんなところから、大文字山地学ツアーはスタート。

太閤岩
太閤秀吉が建築用の石を切り出した場所と言われていてこんな名前のついた岩。結構格好良い露頭だから写真撮ってくればよかった……。また今度大文字山に登った時に撮ってきます。大文字山登山の本道を通ると決していくことは出来ないんですが、ちょっと脇道にそれるだけで簡単にいけるところにあったので、多分これからお気に入りの場所になる……かな?
日本で最初に放射性鉱物トリウム(Th)が発見された場所だそうで、地学通には割と意味のある場所らしいです。基本的には花崗岩がよく見える露頭。勿論、花崗岩でも新鮮なのから風化されて「腐りつつ」あるのまで様々あり、腐った花崗岩は手でもぼろぼろと崩せるようなもの。
さて、ここでの目玉商品は、上述のトリウムを含む鉱物、褐簾石。黒い色をしていて柱状に結晶を作る鉱物で、花崗岩の中に時たま見つかるそうです。あたりの花崗岩を見ていたら、日頃の行いがいい人は見つかるとかなんとか。一応見つけることが出来ました♪
花崗岩は元々黒雲母による黒い斑点があって、それはそれで綺麗なんですが、褐簾石の綺麗さはそれとは別の感じがしましたね。黒雲母の綺麗さを鏡にたとえるならば、褐簾石は剣のような、同じ銀色の輝きであってもその性質はちょこっと異なる感じでした。
放射性鉱物なんですから、当然この露頭の近くにいれば被爆します。よしけむが持って帰ってきた褐簾石のサンプルを見ていてもやっぱり被爆します。とは言っても、レントゲン撮影よりも遥かに(本当に遥かに)弱い程度の放射線しか出してませんし(多分ラドン温泉とかラヂウム温泉とかより遥かに低レベル)、別に健康に被害は無いんですけどね。言葉の綾みたいなもんです。

大文字山〜ホルンフェルス地帯
大文字山は基本的には花崗岩で出来ています……というとちょっと違うか。大文字山比叡山は一続きの山なんですが、それらは当然(?)堆積岩で、砂や泥を主要な材料として出来ています。そこに約2億年前(だったかな?)にマグマが貫入して出来たのが、現在の大文字山比叡山なんです。なので、殆どが花崗岩か、マグマの熱によって堆積岩が灼かれて出来たホルンフェルスと呼ばれる石です。
そのホルンフェルスは一体どこで見られるかというと、大の字の近く。あのあたりで足元を見ると、黒っぽくて硬い石が見られるんですが(舗装されてるコンクリを見てはいけない)、これがホルンフェルス。
今まで意識したことはまるでなかったんですが、なるほど、それまでのぼろぼろと崩れる花崗岩地帯とはちょっと違った感じの地面が広がっていることがわかります。
菫青石inホルンフェルス
大の字から進んで三角点、更にその先へと進むと、ホルンフェルスの露頭があります。ここではちょっとホルンフェルスの採集のようなものをしてきました。
大文字山のホルンフェルス、その主に泥岩質の中には菫青石(きんせいせき)と呼ばれる鉱物が入っていることがあります。六角形の柱状に成長する結晶で、綺麗なものは割と綺麗に見え、またこれが変質したもののうちピンク色に色づいたものを桜石と呼んだりもしているとか。六角形の構造が積み重なっている為、結晶を見る方向によって多色性があるのが特徴で、特定方向から見ると色が青の色が薄く見えるという性質を持っています。
あたりのホルンフェルスを割ったりして、幾つか菫青石の結晶を見ました。綺麗なのもあればそうでないのも。先生曰く、あんまりあたりじゃないとか。まあそういうこともある。でも、ホルンフェルスは基本的に堆積岩の変成岩で光沢はなく、その中にきらきらとした菫青石が入っているのは結構綺麗でした。
ホルンフェルスは硬い石なんですが、硬い分上手く割れたら本当に綺麗に割れるんですよね。それは結構気持ちいい。
因みに、菫青石という名前を聞いて翠星石やら蒼星石やらローゼンメイデンやらという単語が頭に浮かんだよしけむはちょっとどうにかすればいいと思う。

花崗岩の洞穴
これも結構格好良い露頭だったのですよ!
花崗岩が丸くくりぬかれた(多分採石によって)露頭で、なんか映画のロケとかで結構神秘的なシーンに使えそう。伝説の武器が封印されているシチュエーションとかもありかとおもったり。
花崗岩自体はもう風化してボロボロになっていて、手でも軽く崩せる感じでした。あと、一応このあたりも沢山褐簾石が出るらしいです。
そこからちょっと上へ上がるとホルンフェルスの露頭がまたあって、大文字山が複雑に花崗岩が貫入して出来た地質からなっていると言うことがよくわかる場所でした。
とにかく、露頭が格好良かった。

五別所山の大理石
CaCO3と言えば炭酸カルシウム。これが変成したら大理石。原因不明で大理石が存在している一角があるんですと。なんかすげーと思ってしまうのは私だけでしょうか。
そこの大理石帯を見物。大理石の塊がぼこっと切り立った崖のようになっていて、非常に堂々とした露頭でした。うむ、こう言うのを見るとわざわざ山に分け入っている面白みを感じますな。
大理石の一部は珪酸と反応して珪灰石という鉱物に変わっていて、繊維状の模様を岩肌にあらわにしていたりもしました。これははっきりと見えるのがなかなか無くて、TAの方が持ってきていた標本を見せてくださったのですがこれがまた綺麗。石がこんなに綺麗と感じるのもなかなか無いような、そういう綺麗さでした。うん、繊維状のものはそれなりに光沢も見えるし、本当に綺麗でした。

ラストは斑状石英
花崗岩に近いけれど、花崗岩みたいに等粒状にならずに、石英や長石の一部の結晶だけが大きく育っていて後は基本的に斑晶を成しているというもの。この岩石の露頭を見ながら、石英の(つまり推奨の)かけらを探すという採集。
高温のマグマが急に冷やされて出来た岩帯のため、そのような場合は石英の結晶は柱ではなく六角錐×2を底面でひっつけたような形に成長するものだそうです。なのでそういう形のを見つけられればベスト。六角錐のような形のものが見つかれば、まあ及第点のような感じ。この場合のように周りが斑晶の場合は、等粒状組織の場合のように結晶同士が互いに押し合いへし合い成長するわけではなく、大きな結晶は周りにジャマされるもの無く成長できる為、結晶そのものの形が綺麗に出やすいとか。
あたりは、まあ大体花崗岩がボロボロに崩れたような感じになっていて、確かによく見てみれば大きさにして1〜3mm程度の水晶に見えなくもない結晶がころころと転がっています。
都合10個弱、まあそこそこ綺麗な結晶を拾えましたよ♪ 流石に六角錐×2の綺麗なのは見つかりませんでしたが、それが縦に半分に割れたのとか、後は六角錐の形が何とか見えるというものなど、今改めてみてもそれなりに綺麗な水晶の結晶ですね。

因みに山を下りたら大津市でした。よく歩いたなぁ……。そこから京阪と市バスを乗り継いできて帰ってきて、天一で晩飯を済ませて一服ついて今に至る。
疲れた。さて、明日は撮影だ。さっさと風邪治らんかな……。
……あ、あとで採集した岩石のラベリングしとかないと……。