アンダカの怪造学VII-Pandora only one-

アンダカの怪造学〈7〉Pandora OnlyOne (角川スニーカー文庫)

日日日さんのアンダカの怪造学最新刊。えーと、先月のスニーカー文庫だから一応発売後一月半近く経過……。まあ細かいことは気にしない。
前回までで第二部が終了して今回からは怒濤の第三部。
第6巻では怪造学会の汚点とやらも復活してしまうし、伊依は友達になれたかも知れない少女が死んでショックを受けてるし、状況は最悪からのスタートのようです。
恐らくこの「アンダカの怪造学」という作品を通して、今回ほど伊依がネガティブだったこともないでしょう。ショックのあまりふさぎ込んでいるということはありません。日常生活は送れているし、おかしい時には普通に笑い、腹を立てれば普通に怒っています。けれど、そこまでなんです。この小説の主人公空井伊依という少女は、決して普通じゃなく、自分の信じる道を見つけたら誰が止めても何が起きてもその道をひたすらに突き進む少女、つまり非凡な牽引車であった筈なんです。なのに、今回の彼女は、今にして初めて失敗を恐れ、動くことに臆病になっている。今まで一体どうやって根拠にここまでやってきたのか、急にそれを見失ったみたいに馬力を失ってしまったのです。
そこから彼女が再び前へ進む意思を持つこと。今回のテーマは挫折と再起です。
後書きで作者の言うところによると、このアンダカ戦争編は「受験戦争」の隠喩だとのこと。
なるほど、受験勉強というのは(私は実はあまり苦労した記憶がないのですが)行く先の見えない長い長い道のり、さらに時には受験の難しさに絶望を感じるようなこともあるでしょう。それをどうやって乗り越えていくか、そのエッセンスをアンダカの世界に移してみたら、こうなるらしい。
物語はまだまだ終わらない。むしろこの巻は全ての始まりでしかない。
今まで秘されていた様々な秘密。激流院潮静、魔王、アンダカ。様々な秘密が錯綜していくなか、力を手にした伊依がどう進んでいくのか、見物です。
(一応ネタバレチックだから伏せますが、以下一行所感)汚点の魔王と伊依が以前怪造したダーク・オズは別物のように思われるのです。というかDOは実際あの段階でアンダカにいたわけですから。汚点の魔王はアンダカの創造者としてアンダカの支配権を持っているが、しかしその一方で一人歩きしたアンダカに生まれた最強の存在がDOなのではないかと思います。滅作さんが消えてるから全然わからないけど、とにかく汚点の魔王とDOはあまりにも違いすぎる。DOとの絡みだって、伊依が伊依の問題として解決すべき問題であるはずで、それは恐らく潮静達の問題とは別問題なのだと思います。どうなるのかはわからないけれど。