覇者の魔剣

三浦良さんの「抗いし者達の系譜」シリーズ。まあ十一月刊行分なのはぶっちゃけおいときましょう。色々の余波でね。
本作、現魔王は元人間だもので多分物理戦闘になったら脆いし、元魔王も魔力を吸われてしまっているから肉体的には(人間と同程度には)脆くなっているし、そもそも彼らが皇帝だの総督だのというエラい人たちであったりする為に主な武器は「謀略」と「駆け引き」となっていまして……。
何が言いたいかって言うと、戦闘はそんなに無い。そしてソレが魅力なんですよね。
スレイヤーズに始まるライトノベルの黄金パターンとしては、最後にでかい超常現象的(彼らの世界でもなお超常)戦闘が起こって、主人公方の勝利に終わりハッピーエンドというものがあるじゃないですか。ソレがない。
一巻ではまだ行われていた、主人公自らが出向いて色々動くという冒険も、巻を追うごとに減っていき段々と謀略ものの色合いを強めていますね。本作はまた一層その色合いが強まったかと思われます。
読んでいて楽しいですね。

物語はとある魔剣が出土したところから始まる。というか魔剣の対応に終始している内に派手な戦いもないまま終わってしまったという印象が強いのですが……。
本作では魔剣は「魔力を吸うもの」として描かれています。そしてそれは奇しくも皇帝サラの異能と性質を同じくするもの、と言うわけです。
となるとサラを介して運命に復讐を遂げようとするラジャス*1はサラの能力の子細を知ろうとする為に魔剣に関わろうとする。
なんともまあ上手く作ってますね。作家を目指すものとしてはこういう構成はつくづく見習いたいと思います。あと伊坂幸太郎さんとかも。
そうして、魔剣を巡ってまた一つの謀略が張り巡らされる、と。

今回の話は、繋ぎの話であるにも拘わらず三浦さんらしさとシリーズらしさが良く現れていると思いました。
どう考えても話の目的は、ラストシーンの為としか思えません。けれどもそこへ至るまでにまた「この世界」の秘密をつまびらかにし、更にはラジャスには心境の更なる変化をもたらし……、まあ今回皇帝側はからっきしなんですが;
こうしてサラの周囲を取り巻く状況が変わってきて、さて、次巻はどうなることか。もう背後にあるんですよね、当然。なんせ1月刊行ですから。
この土日は本を読みたい。あと書きたい。山にも登りたい。忙しい。

*1:よく考えるとコレって一種のツンデレ? いやいや……