“文学少女”と繋がれた愚者(フール)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”シリーズはてなキーワード化されてるなんてこないだまで知りませんでした。あと各巻名もキーワード化されてるんですね。
そんな話は置いておいて、どことなく雰囲気に独特の物があり、ぞっこんと言うよりはいつの間にやら惹かれているという感じに好いているシリーズ、“文学少女”シリーズの第三巻である“文学少女”と繋がれた愚者です。十二月の本ですね。
表紙を開くと毎度ながら心葉君と遠子先輩のほのぼのとしたやりとりの絵が出てきます。癒される。竹岡美穂さんの絵って好きです。
二枚目の扉絵にはなにやら大正ロマンという感じの登場人物たちが現れて、不覚にも男装の遠子先輩に萌えてしまいました……。

今回は文化祭の話だとか。オーケストラ部に負けたくないがためにたった二人の文芸部で助っ人を集めて演劇を上演するということですが、それって活動の方向性は正しいのか……? 文学作品に目を向けて居るという意味では良いのか。良いのか。
メンバーは……、そもそも今までこの話に名前が出てきた人物って少ないんで、一巻で死にたがってた竹田千愛ちゃん、やきもきツンデレ少女の琴吹ななせ嬢、そして心葉の良きクラスメイトの芥川一詩君でありますが、どうやら彼は色々と訳ありの模様で……、というお話です。
今日も文芸部でいつものようにお話を“味わって”いた遠子先輩ですが、読んでいるのは図書館から借りてきた本、当然食べてしまうわけにはいきません。しかし、遠子先輩が食べるまでもなく既にその本からはページが切り取られてしまっていた。犯人を捜そうと息巻く遠子先輩とうんざりな様子で傍観姿勢の心葉君、しかし心葉はひょんなことからクラスメイトの芥川が図書館の本をナイフで切り取るところを目撃、丁度そこに遠子先輩もおわしまして、現行犯逮捕となってしまう。色々あってそんな芥川君を含む前述のメンバーで武者小路実篤の「友情」を題に劇をすることになった遠子と愉快な仲間たち(違)。けれど演劇に絡んで芥川はとある過去を持っていたのだった。みたいな。
今回のポイントは地雷女だと思うんですよね。更科さんという登場人物が居るわけですが、これが清楚な外聞で居て……、と言う類の人物。読んでいて一瞬ぞっとしましたね。この作品、一巻から読んでいて思うんですが、コメディな場面はとことんコミカルで笑わせて貰えるのですが(今回も宮本武蔵が電気毛布と一騎打ちをして毛布に巻かれて焼け死ぬとか)、暗いところはとことん暗いというか人物の壊れっぷり毎回すごいというか……、極端なんですよね。それ故に物語に面白みが加わっているわけですが。
琴吹ななせとの関係にも若干進展が視られたようなのですが、どうも彼女の立場は終始哀しいですね……。心葉があまりにも鈍感というのもありますが、もう「井上って最低」という台詞がお約束になってきた感があります。
そして、今回一番のポイントはやっぱり芥川君と「美羽」の関係でしょう。いや、まだ「そこに関係がある」ということが示されただけですが。ていうかそもそも美羽って生きていたのかと言うところが驚きでしたが(飛び降りるシーンばかりが強調された人物を誰が生きていると思いましょうか)。やっぱり、死人相手じゃ過去を断ち切るのは難しいということですかね。どうにも美羽も鬱屈しちゃっているようで、これまで結構美化されてきた人物がこれからどう言った登場をするのかとても気になるところです。
次巻は4月28日、僕の誕生日に発売ですが、どうせ生協で買うので読むのは五月末でしょうかね……。いずれにしても、3〜4ヶ月に一冊のペースでシリーズが発行されていくのは、読み手としてはこの上なく幸せなことですね。