グリム童話の世界

グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)

グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)



読んだ動機はおとぎ銃士赤ずきんです。たまたま京大生協で平積みになってるのを見たので、読んでみるのも一興かと思って買ってみました。
興味深くて面白かったですよ。そしてあとから気付いたんですが著者は京大の教授でした。生協で平積みなら、確かに充分あり得る話ではありました。

グリム童話には、僕はあまり親しみがありません。パッと浮かぶのは赤ずきん、シンデレラ、白雪姫、その辺りの所謂「超メジャー所」くらいでしょうか。いばら姫は眠れる森の美女の方がなんとなくしっくり来るくらいです。
そんなグリム童話の世界を、折角赤ずきんを見るのだからもう少し詳しく知っておいても良いかと思って読んでみたのですが、イヤイヤそれ以上に面白いものがあった気がします。
本書に因ればグリム童話というのはドイツの古代ゲルマン文化の残滓なんですね。キリスト教の文化侵略にめげずに民衆の間で語り継がれてきた太古の文化がグリム童話の原型であるということなんです。
その点を様々な童話の「非キリスト教的」要素をピックアップしながら見ていくのが本書です(ちょっと違うか)。
中でも興味深く思ったのは最終章にあった人間と動物の関係の東西です。そこでは「蛙の王様」などの西洋異類婚の話と「ツルの恩返し」などの東洋異類婚の話が比較され、人間が動物をどのように捕らえているかを洋の東西で比較していました。
西洋は人間中心主義に於いて動物は人間より低いもの、対して東洋では動物は感覚も鋭く人間より上のものとして捉えているということです。故に西洋の異類婚では動物(に変身させられた王子)達は忌避され、逆に東洋では人間に変身した動物と人間は仲むつまじくなる、ということらしいのです。
成る程……、確かに云われてみれば動物は対等かそれ以上のものでこそあれ決して低いor忌避するようなものではない、という意識が自分の中にもあります。
文化って面白いものですね。

この先生が授業を開講してないかと調べてみたんですが、ドイツ語のみ開講してました。ドイツ文化についての授業があれば来年度採るのもありかと思ったんですが、うーん、それならいいか。