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どえらい法案が提出されるかも知れないらしい。
本当に、最近政治に対して絶望以外の感情を抱かない。政治家って賢い人がなるものじゃないの?
末は博士か大臣かと言いますが、最近は博士も大臣も、夢も未来も見あたらない袋小路職業になりつつあるみたいです。*1
将来は国外へ逃げたいなー、と本気で考えてます。でも多分無理ですね。海外でやっていく自信がないチキンハートは勿論ありますよ。けれどもそれよりも何よりも、僕はこの日本という国が持つ文化が大好きだから。
じゃあ自分が政治家になってこの国を変えてやるよ! とまで思うほど義侠心溢れるわけでもない。所詮僕は何も出来ない衆愚の一人なんですけれどもね。
話がそれました。まずはこの記事を見て貰いたい。MIAUの未識魚さんのブログの記事である。
日本の子供たちからインターネットが消える日
昨今の空気の読めない規制法案シリーズの新作に「青少年の健全な育成のためのインターネットによる青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」というのが出来つつあるらしい。自民党高市早苗という議員が中心になって詰めている法案で、もう結構具体的な形になりつつあるところのようだ。
端的にまとめると。

日本のウェブサイト全てをある基準に照らして、その基準に引っかかったサイトには18歳未満の者はアクセスできない様にする。
その際、PC・携帯電話には上記のことを達成できるフィルタリングソフトを導入するなどのことがメーカーに義務づけられる。

と言うことらしい。因みに断っておくと今日は4月5日であるからしてエイプリルフールではない。
冗談だったらどれほど良いことか。全くもって理解に苦しむ法案だ。表現の自由をはなはだ侵害しているし、文化に対する冒涜と言っても良いくらいだろう。しかもたちの悪いことに、この法案はこれに伴う多少の弊害もやむを得ない姿勢らしい。便利な言葉ですね、「多少」って。
こんな法案が通ってしまった日には、日本の未来はなくなるぞ。基準だって明白じゃないわけだから、一体何が「有害」と断定されるか分からない。しかもそう言う基準は得てして厳しくなっていくものだから、次第に当初の意図から外れたものまで、ある種予定通りに規制されていくのだろう。
「じゃあ、青少年がポルノを見ても良いのか?」と問われれば、それは駄目だと思うのだが、この法案は絶対に着眼点が間違ってるから。
思うに、規制すればいいと言うものでもないだろう。教職の授業をとっていたからよく分かるのだが、今世の中に求められているのはリテラシーである。良い情報と悪い情報を取捨選択していくことが重要なのであって、規制することよりも教育を進めることの方が重要だろう。有害情報サイトを見ない様青少年に倫理を植え付ける、それこそが問題の根本的解決であって、大体がして規制されれば破りたくなるのが人の常なのだから。
そもそも、「良い」情報だけを選別して子供に与えること、それ自体を僕は良いこととは思わない。話は少し変わるが、清潔な空間がアレルギー性の病気を広めたという話はご存じだろうか。戦後日本の住宅環境は飛躍的に向上し、衣類から住居に至るまで僕たちの身の回りはどんどん清潔になった(ずぼらで掃除をしない人の家でさえ、だ)。そんな清潔な環境で育った子ども達は、小さい頃に病原菌やダニ・カビなどと交わることが少なかった為、言わば世間知らずの箱入り娘として成長することとなった。だから大きくなってから埃やダニに過剰反応してしまってアレルギー性の病気を患うのだ。
これの焼き直しがそっくりそのままインターネットの世界に起きるとまでは言わない。しかし、情報社会で成長していく過程で、最初から「良い」情報だけを与えられていたのではその情報が本当に良いのか悪いのかを選ぶ能力なんて全く育つはずがない。また身近にあった例を挙げたいが、この間管弦楽部の後輩と話していた時のことだ。先日京大他多くの大学生を手玉に取ったチェーンメールのことを話していたのだが、彼女は「私だったらそのメール回しちゃうかも」と言っていた。現に、そう言う人が多かったからあのメールは広まったわけだが、僕などは一目見てチェーンメールに間違いないと思っていたのだが、いやはや、世の中にはそうでない人も多いのだと思い知らされた。確かに、あの手のチェーンメールを見たことがない人には、アレがチェーンメールという悪戯であると言うことに気付くのは難しいのかもしれない。「チェーンメール」という悪戯は知っていても、だ。因みにその彼女もチェーンメールという悪戯自体は知っていた。ただ、現物を見たことがない為現実感が無かった。そして、具体例に危うく騙されそうだったというわけだ。
世の中具体例が実際に目の前に現れなければ分からないということは多い。特に、インターネット上の情報の有害無害なんてものは、そもそもにして線引きが難しいのだから、具体例もなく「有害な情報は見ない様にしましょう」なんて言ったところで無意味。じゃあ社会勉強でエロサイトを見ろ、とまで言うわけではないが、ある程度「悪」を見て学べる様な状況でなければ、真の情報リテラシーは絶対に身につかないだろう。つまり、いつでも予防接種できる状態にしておけ、と言う話だ。予防接種とは、言わずもがな少量の無力化された病原体を体内に入れることにより予め抗体を作り出し、抵抗力を高める人類の知恵だ。この法案が目指す様なAll or Nothingの規制を行ってしまった日には、世の青少年諸君は有害サイトに対する抵抗力を一切身につけないまま大人になって、ある瞬間に全ての規制を解かれた自由の荒野へと投げ出されてしまうのだ。それは果たして良いことなのだろうか。ボウヤだったのさと笑って終わりにすることが出来るのなら良いが、気がついたら架空請求●○万円とか喰らって泣きを見る、なんてことにならないとも限らない。因みによしけむは小学生の頃間違ってダイヤルQ2で数万円取られてめっちゃめちゃ怒られたことがあった(笑) 小さい頃の話ならこうして笑って終わりに出来る。しかも僕の場合は額も少なかったのだし。でも、自己責任の(ボウヤな)大人に対して、遠慮の欠片もない卑劣な牙を剥く、そんな悪逆な手口だって無いとも限らない。果たして、初めて目の当たりにする驚異に対して彼ら彼女らはまともな判断を下せるのかどうか。
まあ無理だな。
僕は思う。ちゃんと情報教育を進めたら、結局そんな興味本位で有害サイトを見る子供なんて出なくなる。それが悪いことだってちゃんと分かっているなら、本屋で周囲を気にしながらびくびくエロ本を立ち読みする高校生みたいな、そんなショボいレベルで収まるはずだ。だから、国はむしろ教育にお金をつぎ込んで情報化社会へどんどん対応していくべきだろう。高校の情報Iで何が分かる? そりゃ、基礎的なことを教える、ウィンドウズの基本操作を学ぶ、その辺りは必要だろう。けれども、今はまだ過渡期だが、その内パソコンの扱い方なんて教える必要のない子ども達が現れてくる。10年もすれば、本当に一クラス40人中40人がワード・エクセル・ブラウザをそこそこ使えて今更情報の授業でパソコンの基本操作なんか学ばなくてもいいっていう時代が来るだろう。その時、教育は一体彼らに何を与えるのか。
未識魚さんは記事にこう書いている。

この法案が成立した暁には、日本の18歳未満がつなぐ「ソレ」は、もう“the Internet”じゃない。

私たちは未来の子ども達に"the Internet"を与えることが出来るのか。
子供が包丁で怪我をしたから一切の料理を禁じるだろうか? 自転車で転けて怪我をしない様に毎日車で送り迎えをすることが本当に正しいのか? 危ないからといって全てを奪っていった先に残るものは、安全とは名ばかりの空虚でなんにもない、楽しみも、創造性も、未来も無い幻想だけだ。それよりも扱う術を。包丁で怪我をした子供には、料理の特訓を。自転車で転ける子供には自転車の特訓を。インターネットの海に潜る子供には、情報リテラシーを。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。敵を知ろうともせず、戦いから逃げてばかりでは、いつか痛い目を見る。ことになるだろう。

ここまでは、法案の中身に対する不満とか、僕の意見とか。
で、ここからはこの法案が今どういう状況にあるのか、と言うことに対する不満をちょっと書き並べようと思います。
なんでも、高市議員の腹では、この法案はガソリンやら日銀やらで揉めている国会に提出して、騒動の隙に通してしまおうということらしい。高市議員は自民党で、民主党からも多少マイルドでよく似た法案が出るそうだが、そんなのをが二大政党から出されたら、「じゃあこの具体性のある方を通しても良いよね」みたいな空気になってしまうのも充分あり得る話だ。しかも、重ねて言うが国会は揉めているのである。全くもって卑怯千万きわまりないというか、本当に勘弁してくれと言うか。
一応、自民党内でも意見が割れている様で、党議拘束をかけた状態*2で提出される見込みは無いみたいですが……そうは言ってもねえ、という感じである。上記の僕の論法を見ただけで気付く人は気付くと思うのだが、この問題、実は「青少年がポルノを見ても良いというのか」と言われると、それに対して反対することは難しい。重要なのはこの法案の矛先がおかしいというだけであって、矛を動かそうとしている原動力それそのものはどうしようもなく正しいことなのである。
だから、面と向かって反対しにくいのだ。
となると、党議拘束が無くても自民民主からほどよく賛成が集まって可決、なんてことになりかねない。それだけは勘弁願いたいものだ。そもそも提出されなければいいと切に願う。
ところが、実際に恐いのは今こうやって議論が白熱して盛り上がって、法案がそもそも無くなったとしても、数年後に再び掲げられる可能性があるということだ。人権擁護法がまさにそれだ。あの法案自体は数年前に一度話題に上がり、その時はメディアの猛反発を受けて結局ぽしゃった。しかし、今回はメディアの反発もなく再び話題に上がっているのである(そういえば結局アレどうなったんでしょうか? ニコ動で盛り上がっていたところまでは覚えているのですが)。まあそうならずにこんな無益な法はさっさと永久消滅しちゃえばいいなーと思うわけです。
まあ、僕はもう20歳(もうじき21歳)の立派な(?)成人で、参政権もきちっと持っていますが政治に対する期待なんて欠片もありませんね。
こんな国に、本当に未来はあるのか。今を刹那的に楽しむことは容易いですけれども、時々不安が去来するのは、確かなこと。

*1:高学歴ワーキングプアasin:4334034233参照

*2:党員は反対を許されない状態